自分の体について、どのくらい知っていますか? 自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiでは、男性同士でも話題に上る機会が少ないという男性の体や性器にまつわる悩みやギモンを聞き込み調査。プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生にお答えいただきました。
Q45.性感染症を未然に防げるワクチンはありますか?
45個目のギモンは、【性感染症を未然に防げるワクチンはありますか?】。なるべく感染リスクを避けるように過ごしても、意図せず性感染症にかかる可能性はゼロではない。さまざまな病気から身を守る予防接種のように、一度受けておけば性感染症を未然に防げるワクチンは存在するのでしょうか?
A45.B型肝炎、A型肝炎、尖圭コンジローマを防げるワクチンがあります!
小堀先生:ワクチン接種によって未然に防げる性感染症は「B型肝炎(HBVワクチン)」、「A型肝炎(HAVワクチン)」、「尖圭コンジローマ(HPVワクチン)」の3つ。HPVワクチンは女性の子宮頸がんを予防するワクチンとして有名ですが、同時に尖圭コンジローマも予防できるのです。
子宮頸がんの予防効果が広く知られている影響からか、HPVワクチン=女性が受けるもので自分には関係ないととらえる男性は多いのではないでしょうか? しかし性感染症である尖圭コンジローマのほかにも、HPVが原因で起こりうる咽頭がんや肛門がん、直腸がん、陰茎がんなども防ぐことができるのです。これらは男性に多いがん疾患ですし、ワクチン接種によってパートナーへの感染リスクを下げられるという意味でも、男性こそワクチンを接種してほしいと思いますね。
実際に男性のHPVワクチン接種は諸外国で推奨されており、20カ国以上の国で公費接種が行われているのです。日本では男性は自費での接種になりますが、一部地域では男性へのHPVワクチン費用の助成補助が少しずつ始まっています。
男性の性感染症やワクチンに対する意識は女性と比べるとどうしても低く感じてしまいますが、当クリニックでは男性が当事者意識を持ちやすいように「コンジローマワクチン」という名称で提供しているおかげで、一日に1〜2人は接種希望者が来院します。そのため性感染症を未然に防ぎたいと思っている男性は少なからずいる印象です。ワクチン以外にもHIV予防薬の取り扱いも行っているので、ご希望の方はぜひ相談してみてください。
プライベートケアクリニック東京・東京院 院長
日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある。
取材・文/井上ハナエ 企画・構成/木村美紀(yoi)