気になるけれど、なかなか話しづらいセックスの話題。どうしたらもっと気持ちいいセックスができるのか…!?
そんなギモンを、女性の体にまつわる知識を惜しみなく話すYouTubeチャンネル『ココシカ診療所』を運営する、医師の二宮典子先生に投げかけてみました。聞き手とイラスト制作は、集英社のマンガアプリ「マンガMee」で『気持ちイイ恋 教えて下さい〜下手なあなたと私と彼〜』を連載中のマンガ家・瀬文まりさん。性に興味津々な瀬文さんが、二宮先生にぐいぐいお話を聞いていきます!
- Q1:そもそも「イク」ってなんですか?
- 興奮の高まりから弛緩へ。中イキも外イキも、実は反応している場所は同じ!
- Q2:Gスポットってどこですか? イキやすくなることはできる?
- Gスポットは腟のお腹側のいわゆる腟前壁、腟口から2cmくらいの場所のこと
- セルフトレーニングで、オーガズムの感覚が掴みやすくなる!
- Q3:性交痛はなぜ起こる? 改善することは可能?
- 外陰部の“痩せ”や粘膜の薄さが、性交痛の原因に!?
- 腟に問題がある場合は、セルフケアを試しつつ、専門医を探して
- Q4:セックスが気持ちよくできる体位ってありますか?
- 人によって、相手によって違うから、いろんなパターンを試して
- Q5:前戯をどれくらいすれば、挿入してもOK?
- 女性が「もう早く入れてー!」と思うくらいがベスト!
- 瀬文まりさん作『気持ちイイ恋 教えて下さい〜下手なあなたと私と彼〜』は「マンガMee」で連載中!
マンガ家
集英社のマンガアプリ「マンガMee」で『気持ちイイ恋 教えて下さい〜下手なあなたと私と彼〜』を連載中。娘3人の子育てが落ち着いた頃、夫と向き合う機会が増え「今後の長い結婚生活を円満に過ごすには、夫婦生活を見直さなければならない」と気づき、夫と楽しく過ごすために日々、性について考え実践するようになった。
Q1:そもそも「イク」ってなんですか?
興奮の高まりから弛緩へ。中イキも外イキも、実は反応している場所は同じ!
瀬文さん 先生、今日はよろしくお願いします! まずは基本的なことから伺いたいのですが…「イク」ってどういうことですか? 体に何が起きているのでしょう?
二宮先生 俗に言われている「イク」というのはオーガズムに達すること、男性でいうところの射精に該当します。「これから性的な刺激があるぞ」と脳が認識した状態で、実際に性的な刺激が加わることで、興奮が徐々に高まる。興奮ゲージが上がっていくようなイメージですね。
ゲージが頂点に達すると、最終的に脳内にはエンドルフィンやオキシトシンなどの快感物質が放出されます。すると骨盤の中の筋肉が反射と収縮を繰り返す「律動収縮」が起きて、自分の意思とは関係なく体がビクンビクンと反応したり、鼓動が速くなる、体温が上がるなどの変化が現れます。そこから体が緩んでいく。この興奮の高まりから弛緩することが、一般的に「イク」と呼ばれていますね。
瀬文さん クリトリスへの刺激でイクことを外イキ、腟への挿入でイクことを中イキと呼んだりしますが、これはどういった違いがあるんですか?
二宮先生 実は外イキも中イキも、反応している場所は一緒なんです。中イキはGスポットやポルチオ(子宮口付近)への刺激によるものですが、これらもクリトリスの脚部と呼ばれる部分で、全部繋がっているんですよ。
Q2:Gスポットってどこですか? イキやすくなることはできる?
Gスポットは腟のお腹側のいわゆる腟前壁、腟口から2cmくらいの場所のこと
瀬文さん 外イキも中イキも結局はクリトリスへの刺激ってことなんですね! では、腟への挿入による中イキの方が快感が長く続く気がするのは一体なぜなのでしょう?
二宮先生 刺激の長さが関係していると思います。外イキのときはクリトリスの突起している部分だけが刺激されているので、腟内まで収縮が起きていない。中イキするときは腟内の血流が増えて全体が収縮するので、範囲が広い分刺激が長く続くのだと考えられますね。
瀬文さん 確かに、腟内全体の収縮と考えると快感の深さに違いがあるのも納得ですね。ちなみに、さっきチラッとお話に出たGスポットとポルチオについても詳しく聞かせてください。
二宮先生 Gスポットは腟のお腹側のいわゆる腟前壁、腟口から2cmくらいの場所のことを指します。触ると性的な快感が得られる場所で、ほかの腟壁を触られるのとでは明らかに違う感覚があったら、それがGスポットだと思っていいです。ポルチオは子宮口付近にある快感が得られる場所のこと。ただ子宮の向きや骨盤の角度は人によってかなり違いがあるんですよ。
Gスポットにしてもポルチオにしても、場所も感じ方も個人差があるので「どこにあるかわからない、感じない」ことで不安になる必要はありません。経験する中で徐々に「これがそうかもしれない」と感覚を掴んでいけるのが理想的ですね。
セルフトレーニングで、オーガズムの感覚が掴みやすくなる!
瀬文さん まずは自分が何を感じ取れるかを知ることが大事なんですね。ちなみに、セックスでイケない、というお悩みもよく聞くのですが、感覚を掴む練習法はあるのでしょうか?
二宮先生 骨盤底筋のトレーニングでも使われるのですが、腟をギューっと締める練習をすると、腟まわりが柔らかくなってオーガズムの感覚を掴みやすくなると思います。オーガズムに達するにはとにかく神経を研ぎ澄ませて、時には相手を無視するほどの集中力が必要! 自分がどこに力を入れると腟がどう動くのか、じっくり探ってみてください。
Q3:性交痛はなぜ起こる? 改善することは可能?
外陰部の“痩せ”や粘膜の薄さが、性交痛の原因に!?
瀬文さん 性交痛に悩んでいる人が本当に多い印象なのですが、先生は何が原因だと思われますか?
二宮先生 患者さんを診ていると、外陰部が痩せていて粘膜が薄い人が本当に多いです。もう臓器自体がセックスする状態じゃない! 原因は痩せすぎや生活習慣の乱れ、低用量ピルを飲み続けることも粘膜量を減らす一因になったりします。
瀬文さん 臓器レベルの問題なんだ…! 粘膜の薄さを自分で改善することはできますか?
二宮先生 もしやっていたら止めてほしいことは、毎日きれいに洗い過ぎることですね。ありがちなのが、小陰唇の端のほうに溜まる恥垢と呼ばれる垢、これをお皿洗いみたいに指がキュッとなるまで落としちゃうこと。小陰唇は粘膜構造で、内側は完全な粘膜、外側は多少乾燥しても大丈夫な粘膜という、くちびると同じような作りになっています。この粘膜を毎日こすり洗いすると次第に痩せ細って、分泌液も出にくくなってしまい、性交痛やにおいの原因にもなりかねません。
瀬文さん 今はデリケートゾーン専用のソープとかがある分、ケアしているつもりで洗いすぎている人は多いかも…私も気をつけます。ちなみに性交痛の対策として潤滑剤を使うことはありですか?
二宮先生 潤滑剤は対策ではなく、もはやセックスのスタンダードです! 長年つき合っているならまだしも、相手の性器の大きさやどのくらい濡れるかがわからないんだから、最初のセックスのときほど使ってほしい。それが当たり前でみんなの認識が「普通は潤滑剤を使うけど、使わなくていい場合もあるよね」になれば、楽になる人も多いですよね。ただ、痛いことと滑りがよくなることは別問題。性交痛の原因が腟にあったら解決にはならないんです。
腟に問題がある場合は、セルフケアを試しつつ、専門医を探して
瀬文さん 「潤滑剤はセックスのスタンダード」って全人類に広まってほしい! じゃあ腟に問題がある場合、婦人科で性交痛の悩みを聞いてもらうことは可能なんでしょうか?
二宮先生 正直、性交痛まできちんと話を聞いてケアしてくれる病院はほとんどないと思います。日本ではわざわざ病院へ行ってお金を払ってセックスを改善したい、とは思えない人が多い。でも悩みを抱えている人の数は多いから、それを伝えることで専門医が増えたらいいな、というのも私がYouTubeを始めた理由のひとつなんです。
瀬文さん 海外だとカップルでセックスについてのカウンセリングを受けたりもしますよね。日本の、性に関することへの社会の意識や個人の知識の遅れを実感しました。
二宮先生 医者も仕事なので、お金を払う人がいない分野ではなかなか専門医になりづらいのが本音じゃないでしょうか。だから自分でできそうなケアの情報を探して実践してみるのは手だと思います。ただ、ひとつの情報源を盲信せず、色々な人の意見を聞いて自分はこれが合いそう、と思うものを試してみてください。同時並行で、性交痛やホルモンについてなどを専門的に診てくれる病院が、行ける範囲にあるかどうか探してみてください。
瀬文さん 二宮先生のようなお医者様が増えることを切に願います…!
Q4:セックスが気持ちよくできる体位ってありますか?
人によって、相手によって違うから、いろんなパターンを試して
瀬文さん セックスにおける体位って、より楽しくなる・気持ちよくなるための方法だと思うのですが、やっぱり体位によって感じ方にも違いは出ますよね?
二宮先生 もちろん出ますよ! 女性なら腟の長さがどのくらいなのか、子宮が前屈なのか後屈なのか、男性なら勃起したときにどちらに曲がっているか、反りが強いのか弱いのかなど、それぞれの体の形によって気持ちいい体位は違ってきます。
瀬文さん 自分の体はこうだからこの体位が気持ちいい、と思っていても、相手によってまったく変わってくるんですね。
二宮先生 そう! だからいろんなパターンを試したほうがいいと思います。あとは、例えば顔が見えたら恥ずかしいという人は後背位、女性が自分で動けるなら女性が上に乗る体位のほうがいい場所に持っていきやすいとか、何を求めるかにもよりますね。
あと、サーカスなんか!? っていうくらいしょっちゅう体位を変える人っているじゃないですか。それはあまり推奨していないです。挿入していい感じの場所が見つかったら、そこで腟がたっぷり充血するまで一定の刺激を続けるのがおすすめ。まあ、これは個人的なおすすめなので、人によって好みはあると思うんですけど(笑)。
瀬文さん でも最初におっしゃっていたように、徐々に興奮ゲージが上がっていってオーガズムに達することを考えたら、いいなと思った場所を刺激し続けるのはよさそう!
二宮先生 どのくらい開脚できるかとか、長時間同じ体勢でいられるかとかは個人差がかなり出てくるので、そこも無理のない体位を探してみるといいと思います。
Q5:前戯をどれくらいすれば、挿入してもOK?
女性が「もう早く入れてー!」と思うくらいがベスト!
瀬文さん 性交痛にも関わってくることかもしれませんが、前戯ってどのくらいすればいいんでしょう?
二宮先生 人によりますけど、私が考えるベストは女性が「もう早く入れてー!」って思うくらい。まり先生、これ完全同意してもらえると思うんですけどどうですか?(笑)
瀬文さん 確かにそこまで前戯をしてくれるのは最高! でも忙しかったりしたら、そこまで時間をかけられないという人も多い気が…。
二宮先生 そこなんですよ。セックスというものを“前戯で女性をイカせて、挿入して、何度か体位を変えて、射精する”というパッケージにしてしまっている人がすごく多い。10分しかないならイチャイチャするだけ、ハグするだけでもいいし、挿入しても抱き合ってるだけで動かなくてもいい。
お互いが何を求めていて何で安心感や満足感を得られるのか、それを共有できていれば、セックス=時間をかけなければできない、とはならないと思うんです。
瀬文さん セックスのゴールは挿入や射精だけじゃないですもんね。ちなみに、女性が「もう早く入れてー!」って思うとき、見た目にも変化がありますか?
二宮先生 濡れるだけじゃなくて、小陰唇が柔らかくふわふわになります。あんまり実感している人はいないと思うんだけど、例えばお風呂とかトイレに入ったときに小陰唇をちょっと触って感触を覚えておくんです。で、セックスやセルフプレジャーでちょっと濡れてきたな、というときにも小陰唇を触ってみてください。最初に触ったときよりちょっと腫れていると思うし、人によっては少し外側に広がっている場合もあります。血液が集まってくるから柔らかくなって、分泌液も増えてしっとりしてくるんです。
瀬文さん 実は夫に「もう入れていいってときは見た目でわかる」って言われたことがあって。指を入れていてもふわっと包み込まれるような感じになるらしいので、実はパートナーのほうがその変化は感じているのかも。
二宮先生 ちゃんと変化を感じ取ってくれる素敵なパートナーですね。きちんと前戯をして分泌液が増えていると、傷もつきにくいし雑菌も繁殖しにくい。そして尿道にも分泌液がたまるので、膀胱炎のリスクも低くなりますよ。
瀬文まりさん作『気持ちイイ恋 教えて下さい〜下手なあなたと私と彼〜』は「マンガMee」で連載中!
イラスト/瀬文まり 取材・文/堀越美香子 企画・構成/木村美紀(yoi)