30歳前後になると後輩ができて、30代中盤に入ると「若手」とも言われなくなってきます。ところが“いい先輩”でいようとすると、息苦しく感じてしまったり、自分がつまらない人間に感じてしまったり…。30代特有の悩みを、人生の先輩でもあり、「先輩」として多くの女性にリスペクトされている小泉今日子さんにぶつけてみました。
小泉今日子 インタビュー

小泉今日子
小泉今日子

神奈川県生まれ。1982年「私の16歳」で芸能界デビュー。以降、歌手、俳優としてテレビや映画、舞台で幅広く活躍。2015年より代表を務める「株式会社明後日」では、プロデューサーとして舞台や音楽イベントなどの制作も手掛ける。文筆家としても定評があり、『黄色いマンション 黒い猫』では、講談社エッセイ賞を受賞。Spotifyオリジナルポッドキャスト『ホントのコイズミさん』にてパーソナリティを務める。新刊『ホントのコイズミさん NARRATIVE』発売中。https://303books.jp/hontonokoizumisan-narrative/

人生で初めて年齢について考えるのが30代

小泉さん:30代って人生で初めて年齢について考えて、「ああ……」ってなる頃かもしれないですよね。皆さんのお悩み、受けて立ちましょう(笑)!

——昔は人から「若いね」って言われると、なんだかバカにされているようで嫌だったのに、つい後輩に同じことを言ってしまいます。こういった経験はありますか?

小泉さん:「若いね」っていうのは、今58歳の私でも70代の人によく言われますよ。一生言われる言葉だと思います。母親が70代の頃にも、知り合いに「あら、若いわね」って言われてたもん。だから、「若いね」って、言ってもいい言葉なんじゃないかな。30代はそう言われることにも、つい自分が言ってしまったことにもモヤモヤするかもしれないけど、もうしばらくたったらどうでもよくなるってことはお伝えしておきますね(笑)。

小泉今日子 お悩み相談

悩み多き年頃には思う存分悩んで、行動しておく

——小泉さんの新刊『ホントのコイズミさん NARRATIVE』でも、「若い」という言葉について思いを巡らせていらっしゃいます。若い頃はよかった、なんて思うことはありますか?

小泉さん私は「若い頃に戻りたい」とか「若い頃がよかった」なんてことは感じないです。もし戻れるとしたら40代を選ぶと思う。20代や30代ってとにかくいろいろなことに悩んでいたから、「yoi」読者の皆さんが今悩んでいることもよくわかります。でも、この悩み多き年頃に、思う存分悩んで、行動しておくと40代になって少しラクになりますよ。

50代の今ももちろん楽しいんだけど、40代は特に楽しかったですね。自分の精神と肉体がちょうど仲良くなっているって感じで。本当によくお酒を飲んでいましたし(笑)。毎晩たっぷり飲んでも、まだ仕事に行けるぐらいの体力があったんですよ。バケツ一杯分ぐらいお酒を飲んで、次の日にそのまま仕事に行ってました。

一番やんちゃで元気だった頃かもしれない。まわりの友達も仕事を頑張っている人ばかりだったから、経済的にもちょっと余裕が生まれてきて。「旅行行く?」って急に誘っても「行っちゃうか!」みたいな勢いがあったんですよね。

20代の頃は、自分はすでに今の仕事をしていてまわりの子たちよりお金があったから「どっか行こうよ」って誘っても「お金がない」って断られちゃう。「私が出してあげると関係が崩れるかな」っていつも気にしていたから、それから解放されて嬉しかった。

小泉今日子 ホントのコイズミさん

——その頃に比べて、「成長した」と感じることはありますか。

小泉さん自分の発する言葉にどんどんしっくり来るようになりましたね。さまざまなことの説明がうまくなっているというか。言葉と自分の関係が気持ちのよいものになってきた実感があります。思考とマッチしている感覚です。

あと、とくに今は頑張りすぎないでいられるようになったかな。無理をしないように過ごせるようになった。「今日は疲れたから頑張らない」って素直に言える。30~40代の頃は「私が頑張っていないとダメだ」なんて頑なに思ってしまっていたけど。まわりは「休んでくれたらいいのに」って内心思っていたでしょうね(笑)。今は意識して休むようにしています。本を読んだり、大好きな韓国ドラマを観たり、猫と一緒にのんびりしたり。

できる限り“頼りない先輩”でいる。話を普通に聞いてあげる

小泉今日子 インタビュー 2

——30代は後輩ができる年代です。“いい先輩”でいようとすると、息苦しく感じてしまったり、自分がつまらない人間に感じてしまったりすることがあります。

小泉さん:私もその年代の頃は、後輩が集まってきて悩みを打ち明けてくれる頃でした。いい先輩でいようとすると自分も相手も疲れてしまうから、できる限り頼りない先輩でいようと心がけていました。「あ、こんなんでいいんだ」って思えて、ラクになってもらえるかな、って。

だからアドバイスもほとんどしたことがないんじゃないかな。「そうなんだ」「でも、それはさぁ」って、話を普通に聞いてあげるだけでもいいんだと思います。聞いてもらえたほうもそれですっきりする。「何かをしてあげよう」というスタンスはうまくいかないことも多いですよ。おせっかいはやめましょう。

会社などの組織に属していると、そうはいっても難しいこともありますよね。でも、昔よくいた熱血だけど怒る先輩みたいな存在にはならなくていいと思う。うちは小さな会社ですけど、何人か社員がいるんですね。その人たちの得意なこと、苦手なことがなんなのかよく見るようにしています。

そうやって観察していると、この子は、苦手なことを指摘されるとドキドキしちゃうから反発してくるんだな、とか、わかってくるようになるんですよ。謝れない子に対しては、「1回謝らないと先に進まない。私だってモヤモヤするから、1回謝ってみようか」って声掛けをします。

大人数を見なきゃいけない場合は大変だと思うけど、とにかく観察するしかないよね。あと、先輩側のこちらも、自分が失敗したり、手間をかけたりしてしまったら、きちんと謝るのが大切。「ごめんなさい」と「ありがとう」は人間の基本ですから。

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撮影/松岡一哲 ヘア&メイク/石田あゆみ スタイリスト/藤谷のりこ 取材・文/高田真莉絵