20代で転職を6回繰り返し、2023年12月に『転職ばっかりうまくなる』を上梓したフリーライター・作家のひらいめぐみさん。「辞めたいと思ったら辞める」と語るひらいさんが、転職を重ねて得た、自分の気持ちを大切にする習慣とは。

ひらいめぐみ
ひらいめぐみ

1992年生まれ。茨城県出身。フリーランスでライターとして活動するかたわら作家として執筆も行う。2022年に私家版『おいしいが聞こえる』、2023年『踊るように寝て、眠るように食べる』、2024年『転職ばっかりうまくなる』を刊行し注目を集める。

時間をお金に変えることに限界を感じたアルバイト生活

転職ばっかりうまくなる ひらいめぐみ

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——大学を卒業後、6回の転職を経て今の仕事にたどり着いた経緯を教えてください。

ひらいさん:就職活動をしなかったので、職が決まっていない状態で大学を卒業しました。まわりの人には就活のアドバイスをいろいろともらったんですが、「嫌なことは、やらないほうがいいよなぁ」と思い、就活は自分の意思でしなかったんです。その頃はコンゴ民主共和国の紛争問題について考えることに夢中だったこともあり、それを続けるためにも「最善の策」を選んだと考えていました。

大学を卒業して半年はコンビニで働き、その後アパレル倉庫のバイトへ職を変えました。倉庫のバイトは楽しかったのですが、とにかく生活が苦しくって。お金がないと余暇を楽しむこともできませんし、「お金がないこと」ばかり考えてしまうのがとにかくつらい。友達とランチをするお金も惜しいと感じるほどでした。

そのために一度辞めたコンビニバイトとの掛け持ちをすることに。それによって、毎日寝不足の状態に……。結果、体調を崩してしまったんです。無理をしすぎてしまったんでしょうね。「時間をお金に変えることには限度がある」と気づき、転職エージェントに登録することにしました。

その後会社に就職し、すべて正社員として人材紹介会社の営業、webマーケティング会社、書店、商業施設の運営などと職を変え、現在のフリーライターにいたります。

——アルバイトを掛け持ちする生活から、「正社員」になられたのですね。正社員であることにはこだわりがありましたか?

ひらいさん:
親が会社員だったということにも影響されていたのか、転職を続けていた頃は、正社員で働くことにこだわっていた部分もあって、フリーランスで働くことは自分には無縁だと思い続けていました。

その思い込みのせいで、自分に向いていない仕事に就いてしまったり、それにより体を壊してしまったりするのですが……。社会の「こうあるべき」という価値観が、気づかないうちに私にも浸透していたんでしょうね。

小さなことでもいいから自分の気持ちを大切に

転職ばっかりうまくなる ひらいめぐみ インタビュー

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——そういった価値観がご自身に浸透していた一方、著書『転職ばっかりうまくなる』では「無理して就活しなくてよいと思えた」「キャリアが積み上がらなくても、収入が減っても、辞めたくなったら辞める。これが転職においての私の譲れないポイントである」と書いていらっしゃいます。なぜこの考えを持てるようになったのでしょうか?

ひらいさん:自分の気持ちを優先して決めないとよくも悪くも進んでいかないことを、身をもって感じたことがきっかけです。大企業だった1社目で、起き上がれないほど具合が悪くなり、休職をしたのちに転職した経験も大きいと思います。具合が悪い中、なんとか病院に行って大腸検査をしているときに、「ここまでして会社のために働くことなんてないよな」と思えたというか。

ちなみに自分の気持ちを大切にする習慣は昔からあったのかもしれません。例えば、小さなことですが、飲み会でまわりの雰囲気に合わせて「とりあえずビールで」とは頼めないんです。自分が今本当に飲みたいものはなんなのか、自問自答してから選ばないと気がすまない。たとえほかの人たちを少し待たせてしまっても、絶対に譲れません(笑)。著書の中でも、転職先の社員と面談をするカフェで、クリームソーダを頼んで笑われたことを書いています。

まずは“世間的にいい”とされる選択肢を最初にはずしてみると自分が本当に好きなものが見えてくるかもしれません。自分が本当に好きなものを選ぶことは、自分を大切にすることにつながるような気がします。

転職ばっかりうまくなる ひらいめぐみ インタビュー 就活

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——紆余曲折あってたどり着いたフリーライターの仕事は楽しいですか?

ひらいさん:
フリーになって2年になりますが、今までで一番続いている仕事なんです。なので、自分に合っているのかも、とは感じています。ただ、フリーのライターといってもインタビューする仕事が多いときと、エッセイなどを執筆する仕事が多いときでは業務の内容も、使う脳みそも大きく異なります。ひとつの仕事を続けてはいますが、いくつも副業しているような気分かもしれません。

会社員時代は体調を崩すことが多く、ストレスから体にも負荷がかかっていました。いろいろな職種を経験してわかったのは、時間制限のあるタスクが、私にとって強いストレスになるということ。

オフィスで働いているとどうしても「急だけど今お願いできる?」と、上司や同僚から短い期限で頼まれることがありますよね。それに強くストレスを感じてしまうんです。今の仕事は、急に仕事を依頼されることが基本的にはないので、その点でも居心地よく働けています。

転職ばかりうまくなる ひらいめぐみ 書籍

『転職ばっかりうまくなる』ひらいめぐみ/著 ¥1760  http://millionyearsbookstore.com/

取材・文/高田真莉絵 構成/渋谷香菜子