生理の悩みを軽減できる治療法の一つとして、新たに「ミニピル」と呼ばれる飲み薬への関心が上昇中! 産婦人科医の稲葉可奈子先生に教えていただきました。さらにミニピルを約1年前から愛用しているSさんの体験談もご紹介します。

「ミニピル」って何? 低用量ピルとの違いは? メリットやデメリットを産婦人科医が解説

お話を伺ったのは......
稲葉 可奈子(いなば かなこ)先生

産婦人科医

稲葉 可奈子(いなば かなこ)先生

●産婦人科専門医・医学博士。京都大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、関東中央病院などを経て、2024年7月、東急プラザ渋谷内に「Inaba Clinic」(東京都渋谷区)を開業。産婦人科診療の傍ら、メディアや公演、SNSなどを通して、生きていくうえで必要な知識や正確な医療情報の発信を行う。著書に『シン・働き方 ~女性活躍の処方箋~』(きずな出版)など。私生活では、双子含む四児の母。

みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表 
みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表
メディカル・フェムテック・コンソーシアム 副理事長
Live News α・Yahoo!・NewsPicks公式コメンテーター

Q.ミニピルってどういうもの?

ミニピル ディノゲスト 特徴

A1.女性ホルモンの「プロゲステロン」のみを含む飲み薬です。

稲葉先生:「ミニピル」というのは俗称で、医学用語ではありません。正確な薬名は「プロゲステロン製剤」といい、2種類ある女性ホルモンのうち、片方の「プロゲステロン」のみを含む薬のことを指します。

ネットで検索すると類似商品が多数あると思うのですが、日本で薬事承認されていて保険適用の対象になる薬は、今のところ「ディナゲスト」と、そのジェネリック薬「ジエノゲスト」のみです。

「ディナゲスト」には含有量0.5mgと1mgの2種類があり、はじめは1mgの方が主に子宮内膜症の治療薬として2007年から、次に0.5mgの方が主に月経困難症の治療薬として2023年から、それぞれ日本で薬事承認されて普及してきました。 

Q3.ミニピルにはどんな効果がある?

A2.月経痛やPMSの緩和、経血量の軽減、避妊効果があります。

稲葉先生:服用を継続すると、女性ホルモンの変動が穏やかになり、子宮内膜がいつも薄く保たれるようになることで、低用量ピルと同様に、経血量や月経痛、PMSなど、生理に関する悩み事を改善する効果が得られます。
月経時の出血がなくなることもありますが、排卵を抑制する作用もあるので、妊活中の方は使用できません。

Q3.低用量ピルやミレーナとの違いは?

ミニピル ディノゲスト ピル ミレーナ 違い

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A3.含まれているホルモンや、その服用方法が異なります。

稲葉先生:よく知られている「低用量ピル(LEP)」には「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンが含まれています。
月経に関する悩みの改善や避妊に対して非常に有効な薬ではありますが、前者の「エストロゲン」は、まれに血液を固まりやすくしてしまう作用が起こるため、喫煙者やBMIが30以上ある肥満の方、前兆のある偏頭痛持ちの方など、血栓症のリスクが高まってしまう条件を持つ人は、低用量ピルを服用できません。

また、「エストロゲン」は母乳の分泌量や質にも影響があるとされているので、授乳中の方の服用も推奨されていません。

一方、ミレーナはディナゲスト同様に「プロゲステロン」のみを含むものなので、同様の効果が期待できますが、飲み薬ではなく子宮内に挿入する医療器具であるため、体に取り入れるプロセスが大きく異なります。 
また、ミレーナは効果の範囲が子宮内と局所的なので、PMSの改善効果についてはディナゲストより乏しいでしょう。

Q.ミニピルのデメリットは?

ミニピル ディノゲスト デメリット

Alphavector/Shutterstock.com
 

A5.飲みはじめの頃に不正出血が起こります。

稲葉先生:副作用として、飲みはじめの数カ月間は不正出血のある方が多いです。また、まれではありますが、頭痛や肌あれが起こってしまったという方も。
副作用の量や頻度、期間は個人差が大きく、実際に試してみるまで、どの程度の副作用が生じるのか予測するのは難しいことです。

副作用以外には、毎日2回、だいたい決まった時間に服用する必要があることをデメリットと感じる方もいるでしょう。 

【「ミニピル」体験談】 生理で10年以上悩んだSさんが、低用量ピルをやめて「ミニピル」を選んだ理由

生理に悩んで10年以上。さまざまな低用量ピルを試したけれど......

──ミニピルを試すまでの経緯を教えてください。 

Sさん:これまで10年以上、婦人科で勧められた低用量ピルを服用していました。私は、低用量ピルを1シート飲みきれば高確率で生理が来るようになり、何もしないよりはグッと気持ちがラクになったのですが、それでも生理が来ないことがあったんです。

十数年の間に複数の婦人科を受診して、計4種類ほどのピルを試しましたが、私にぴったり合うものは見つからず。なかには飲むと気分が悪くなってしまうものもあり、体に合わないと感じて自ら休薬期間を設けたこともありました。


30代になっても状態が改善されなかったので、一度大きめの病院で詳しく検査をしてみることにしたんです。
そこで診てもらった先生から「生理を誘発するのではなく、“お休みする”方向の薬も試してみませんか?」と勧めてもらったのが、最近「ミニピル」という愛称で知られるようになってきた「ディノゲスト」という薬でした。

ミニピルで低用量ピルとの違いを体感

ミニピル ディノゲスト 良い

──ミニピルを飲みはじめてから生理や普段の体調に変化はありましたか?

Sさん:私が処方してもらったのはディノゲストの0.5mgで(※ディノゲストには0.5mgと1mgの2種類がある)、このミニピルを飲みはじめてから1年ほどたちますが、不正出血も滅多になく、生理が来ないという状態が安定して続いています!

生理がないおかげで、生理前〜生理中のイライラや頭痛、腹痛、「とにかく今は寝ていたい」という体の重だるさ......そうした生理にまつわる諸々の不快感もまるごとなくなりました。「生理が来ていないとき」の快適な状態がずっと続いている感覚です。

──デメリットに感じることはありましたか?

Sさん:最初の2〜3カ月頃は副作用で不正出血があり、そのときにお腹がぎゅーっと痛くなることがありました。
タイミングが測れないのでちょっと不便でしたが、副作用については主治医の先生からあらかじめ説明を受けていて覚悟していましたし、毎月重たい生理が来ることに比べたら、個人的には全然許容範囲と思えるデメリットでした。
体が薬に慣れてくると不正出血の頻度も減っていき、最近はもうまったく起きていません。