2019年から「性教育YouTuber」として活動してきたシオリーヌさん。2021年には自身の妊活について動画で発信を始め、人工授精を経て妊娠、2022年夏頃に第一子を出産しました。その後、同年10月に自身の会社(株)Rineを設立し、代表として会社を経営しながら、なんと2023年からは大学院にも通い始めたそう。
会社の経営、子育て、大学院進学、YouTuber…。一人の人間として自分の人生をどう“デザイン”していくのか、現在のリアルな生活やその中での葛藤、今思うことについて、全6回の連載形式でお届けします。
第5回は、産後の健康管理について。摂食障害の経験から、今のベストなパーソナルトレーニングを見つけるまでの歩み、現在の体との向き合い方について伺いました。
これまでは「ダイエット」でしか自分の体に向き合ってこなかった
——ご著書『食べるの怖いな』(ハガツサブックス)では、摂食障害のご経験をコミックエッセイにされていますよね。シオリーヌさんはこれまで、どのように自分の体に向き合ってきましたか。
食べるの怖いな/大貫詩織(ハガツサブックス)
シオリーヌさん:妊娠前は、「ダイエット」を通じてでしか、自分の体のことを考えてきませんでした。私が初めてダイエットをしたのは中学生のとき。体重が減ったことをきっかけにクラスの中心的存在のギャルたちにすごく褒められて、それが私のモーレツな成功体験になりました。大学生と社会人のときにも、「数カ月で十数kg痩せる」という急激なダイエットを実施。食べては吐き戻すを繰り返していました。
——最近、ニュージーランド在住のトレーナーmikikoさんから、健康指導を受けていらっしゃるそうですね。どのようなきっかけで指導を受けることになったのでしょうか?
シオリーヌさん:2023年の春に子どもが保育園に行くようになってから毎月子どもの風邪をもらうようになり、今も12月からずっと咳が止まらないんです。一緒に働いている方に迷惑をかけることも増えてきてしまって…必要に駆られて、健康管理について考えるようになりました。
また最近の健康診断で、出産前から10kg体重が増えていたことがわかり、今は本当に写真を撮られたりするのが嫌なんですよね。そういういろいろなきっかけが重なって、自分の体に関心が向いている状態です。
——「産後ダイエット」という言葉があるように、社会には「出産したら産前の体型に戻すべき」という考えが広まっているように感じます。
シオリーヌさん:実は出産後、YouTubeで産後ダイエットに関する案件の依頼がたくさん来ました。「痩せること」が仕事になるってとても怖いですし、自分の体型のことを他人からとやかく言われたくない。依頼が来ることで「今の私って産後太りだと思われているんだな…」と思い、落ち込みましたね。
そんなときにmikikoさんは、「出産前後では、子どもを抱っこするとか、外出時の荷物が違って、必要な筋肉量も変わっているから、今の生活に適応するために体が変化しているんですよ」とか、「出産後、2年近くかけて変わってきた体型を、数カ月で急激に変えるのは無理なこと。焦らず年単位で健康に戻していきましょう」と言ってくれたんですよね。産後の健康管理は、「急激なダイエット」だけじゃないんだなと思えるようになりました。
体重測定も、無理なトレーニングもない。新しいパーソナル健康管理の形
——取材時点で、パーソナルトレーニングを始めて3カ月とのことですが、mikikoさんとはどのようなことをしているのでしょうか?
シオリーヌさん:彼女はニュージーランド在住なので、基本的にはリモートで月に1回1時間程度時間を取って、トレーニングするのではなく、とにかく話をします。そこで最近の食事の内容や悩みを共有して、生活改善のためのアドバイスをもらうんです。
例えば、これまで私は、毎日の食事をウーバーイーツのジャンクフードで済ませていました。それを話したところ、「週5日ジャンクフードを食べていたのなら、まずは週3に減らしましょう。今までとギャップが大きいほどストレスが大きくなるので、むしろ週3はジャンクフードを食べてください」というアドバイスをもらい、ヘルシーな食事の回数を少しずつ増やしているところ。自分のための料理は苦手なので、ウーバーイーツの中でもヘルシーな鍋や魚のお弁当を一緒に探して、少しずつ改善しています。
バランスを考えて選んだお弁当と、カットフルーツ
——パーソナルトレーニングというと、厳密な食事管理や運動指導をされるイメージでしたが、食生活をベースとしたカウンセリングのようですね。
シオリーヌさん:私自身も、「パーソナルトレーニング=減量」「数カ月で短期的に痩せるもの」というイメージを持っていたのですが、そういうトレーナーさんばかりではないと思います。今は、「医学的に体重管理の必要があるような状況ではないのなら、体重は量らなくていい」と言われていて、mikikoさんに体重を伝えたことは一度もないです。焦らず食事や姿勢を少しづつ改善しながら、自分にとっていい状態を作れるように整えているところ。今の状況や気持ちを理解して寄り添ってくれるようなトレーニングが自分には合っていると思います。
自分のために、「アンチエイジング」ではなく「ウェルエイジング」を目指す
朝食前、子どもの食事を用意している間に飲むようになったプロテイン
——健康管理に向き合う中で、ハードルに感じていることはありますか?
シオリーヌさん:摂食障害だった過去の経験から、過激なダイエットの“頑張りスイッチ”が入りそうになるのを止めることです。「太っている自分が嫌い」という感覚が自分の中に根深くあって、頭の片隅で「健康管理のついでに痩せたらいいな」と思っちゃうんです。mikikoさんには、「大きな目標を決めたり、頑張ろうと思いすぎないでください」と言われていて、「私の仕事は、シオリーヌさんのモチベーションを折ることです(笑)」とさえ言われています。
健康管理を始めてからは、とにかく健康的に年を取りたいと思っているんです。「アンチエイジング」ではなく「ウェルエイジング」ですね。誰かに何かを言われたからとかではなく、あくまで自分のための健康づくり。その方法の一つとして、“痩せる”だけが目標ではない様々なパーソナルトレーニングが、多くの人の選択肢になればいいなって思います。
取材・文/雪代すみれ 企画・構成/種谷美波(yoi)