甲賀かをり先生のイラストによる、連載第5回の扉

「生理周期や生理痛に関する不調を職場で相談できない場合は、どうしたら?」「休んで婦人科を受診しにくい」という声が寄せられています。今月のドクター、産婦人科医の甲賀かをり先生からの最終回のメッセージです。

今月お話をうかがうのは…
甲賀かをり

医学博士・産婦人科専門医

甲賀かをり

東京大学医学部附属病院産婦人科准教授。同病院で日本初の子宮内膜症外来を設立するなど、生理痛に悩む女性たちの診療に力を注いでいます

生理痛で困っている仲間を見つけて!

増田:生理痛で困っている女性たちから、周囲に「不調に悩んでいることを言えない」という声が多く上がっています。例えば…

「生理時の頭痛があるが、仕事が休めない。男性が多い職場なので相談もしにくい」
「リモートワークだと、より生理による不調が言いにくい(言うタイミングがない)」
「生理痛を理由に仕事を休んで婦人科に行けない」

職場で生理に関係する不調を相談できない場合は、どうしたらいいでしょうか?

甲賀先生:男性の上司や同僚に言いづらい気持ちはわかりますが、ここはぜひ勇気を出して言ってみていただきたいですね。自分ひとりで言いづらいなら、女性の同僚や少し年上の先輩に相談してみるのはどうでしょう。生理痛は、あなたが悪いわけではないのですから。また、生理痛で困っている人は、ほかにもいるはずです。仲間を見つけて、みんなで上司に話してみることはできないでしょうか? あなたが声を上げることで、救われる仲間がきっといると思います

生理痛の緩和は会社にとってもメリットに

増田:生理休暇は国に認められていて、福利厚生として働く女性の権利でもありますよね。

甲賀先生:はい、そうです。今、健康経営において、特に女性の健康に関する取り組みは、国からも積極的にすすめられています。企業内で具体的なアクションをどうとっていいか迷っている場合などは、女性が声を上げてくれたら「待ってました」という上司もいるはずです。

増田:もし、会社に産業医や産業保健師、産業看護師がいれば、生理休暇が取りにくいことを相談してみることもできますね。

甲賀先生:ぜひ、そうしてほしいです。そして、取得した生理休暇を使って婦人科を受診し、生理痛を治療してください。生理痛が緩和できれば、労働生産性も向上しますから、会社にとってもメリットになりますよね。「痛いときは休んで治療をして、生産性を上げるんだ」と考えてみてはどうでしょう。私は産婦人科医として、企業や社会全体の生理への理解が進んでほしいと願って活動しています。次世代の若い女性たちのためにも、生理痛のことを臆せず、上司や職場に話せる社会になってほしいと思います。

リモート取材中の甲賀かをり先生

リモートで取材に対応いただいた甲賀かをり先生。

生理痛をケアするためのアドバイス

増田:最後に産婦人科医として、10代20代女性が生理痛や生理周期を上手にケアしていくためのアドバイスをお願いします。

甲賀先生:生理痛や生理周期の悩みがあったら、まずその不調を自分なりに整理してみましょう。「自分の生理日と調子が悪い日、どんな不調か、不調があるのはどういうときか、心地よく過ごせる日はどういうときか」など、自分の状態をしっかり見つめて、メモをしておきましょう。

そして、繰り返しになりますが、生理に関する悩みがあったら、どんな悩みでもいいので、まず婦人科を受診してください。ネットで調べてあれこれ悩むより、まずは病院で受診してほしい。受診した結果、「異常なし」ならそれはそれでいいのです。この時点で自分は異常がなかった、という今後のための貴重なデータになります。

今は、玉石混交の情報の中から正しい情報を見極めて、必要な情報を入手するのが難しい社会になっています。ネットの体験談や、友達や親、上司の意見だけに左右されないで、専門家の力をぜひ活用して欲しいですね。

生理痛や生理周期の悩みがあったら、自分の状態を整理してメモしたうえで婦人科を受診して

増田:甲賀先生、5回にわたって生理痛に関するアドバイスをありがとうございました。

生理痛がなくなると、体だけでなく心も快適になってパフォーマンスがアップし、人間関係も良好になる。日常生活にも人生にも前向きになりますね。そう考えると、生理痛で悩み続けているのは大きな損失だと思います。生理痛は治せます。我慢せず、ぜひ婦人科を受診してください。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

撮影/島袋智子 イラスト/itabamoe Photo by Miya227/iStock/gettymages 取材・文/増田美加 企画・編集/浅香淳子(yoi)