例年以上に厳しい暑さが続いた今年の夏。やっと秋の気配になりましたが、長引くマスク生活も相まって、夏疲れが残っている…という人も多いのでは? 2021年に、日本リカバリー協会が20歳から79歳の日本人男女約10万人を対象に疲労の状況を調査したところ、8割以上の人が疲れていると返答。コロナ前と比較しても、疲労感を感じる人が増加傾向だったそう。
疲れを感じたときに多くの人が頼りにするのが「栄養ドリンク」ですが、イシハラクリニック副医院長の石原新菜先生によると、思い込みで栄養ドリンクを選んで飲み続けると、逆に疲れが慢性化してしまうこともあるんだとか! 疲労タイプに合った栄養ドリンクの選び方、あなたは知っていますか?
日本リカバリー協会による調査。調査対象:20~79歳の日本人男女 計約10万人 調査時期:2021年11月 調査方法:インターネット
医師、イシハラクリニック副委員長
ポクラティック・サナトリウム副施設長。現在は父、石原結實のクリニックでおもに漢方医学、自然療法、食事療法により病気の治療にあたっている。クリニックでの診察のほか、わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演、テレビ、ラジオ、執筆活動など幅広く活躍中。
肉体疲労、精神疲労、自律神経疲労…。あなたの疲れは?
夏の暑さは、人間の体にとってストレスのもと。さほど忙しくなくてもなぜか疲れている…という人が多いのも、今年ならではの疲れの傾向かもしれません。「また最近は、“テレワーク疲れ”を訴える人の来院が後を絶ちません。テレワークそのものに疲労を感じていたり、体力が弱っているのに急に活動して疲労が抜けないという方も多いと感じています」と石原先生。
「疲労には、肉体疲労、精神疲労、そしてその両方の疲労などさまざまなタイプがありますが、特に今年の晩夏に注意してほしいのが自律神経疲労です。猛暑続きで自律神経が乱れやすく、知らず知らずに疲労が蓄積している人が多いようです。自律神経は、心拍、呼吸、体温、血圧など、体の機能をつねに調整しています。真夏は40℃近い屋外から25~28℃の室内への移動が多く、頻繁に体温調節をしなければならないため、自律神経も疲れてしまうのです」
即効果を求めるなら「医薬品タイプ」。日常的に飲むなら「食品タイプ」を
「そんな自律神経の乱れからくる疲労感には、医薬部外品系のパワフルな栄養ドリンクよりも、リフレッシュ系やバランスを整えるようなドリンクが向いています」と石原先生。でも、そもそも栄養ドリンクにはどんな種類があるのでしょう?
石原先生によれば、栄養ドリンクは大きく「医薬品」と「食品」に分けられるのだそう。「医薬品や指定医薬品は、一時的にパワーを発揮したいときに有効です。でも、効能が切れたときに一気に疲れが出てしまうのが特徴。一方、食品タイプはマイルドなので、日常的に摂取することができます。1日に必要な栄養成分を補える栄養機能食品や、効果や安全性を国が審査し、食品ごとに消費者庁長官の許可を得ている特定保健用食品(トクホ)などがそれに当たります。
慢性的な疲れや気温変化による体調不良でなんとなく調子が出ないときには、食品タイプの栄養ドリンクが効果的かもしれません。最近はエナジードリンクを飲む人も増えていますが、カフェインが多く含まれているものが主流のため、もうひと踏ん張り頑張りたいときにはいいかもしれませんが、精神的な疲労には逆効果の場合もあるので注意が必要です」
3つの疲労タイプから自分に合う栄養ドリンクを
栄養ドリンクやエナジードリンクは、疲労のタイプによって発揮される効果が違うので、自分の疲れに合った栄養ドリンクを選ぶことが大切です。以下は石原先生による、疲労の原因別・おすすめ栄養ドリンク・エナジードリンクの分類です。「それぞれのタイプの特徴を把握し、商品パッケージの表示を確認して自分に合ったものを選びましょう」(石原先生)
①エネルギー不足の疲れに…滋養強壮系ドリンク
成分のタウリンは運動による筋肉ダメージを軽減、ビタミンB群は効率よくエネルギーを生み出す働きをします。肉体的な疲労回復に効果的です。
該当ドリンク例:リポビタンD(大正製薬)、アリナミンV(アリナミン製薬)、QPコーワ(興和)
②ライトなお疲れ・バランス乱れに…整え系ドリンク
レモン、マカなど食品成分を配合した栄養ドリンクで日常的な使用もOK! マカはテストステロンに関与しバランス乱れを整え、レモンはクエン酸で疲労感を軽減、ウコンは肝臓の働きをサポートします。
該当ドリンク例:マカの元気(ポッカ・サッポロ)、ラクシテ(ハウス食品)、キレートレモンクエン酸2700(ポッカ・サッポロ)
③あともうひと踏ん張りしたいときに…エナジー系ドリンク
カフェインで眠気を抑え、アルギニンで体内のエネルギー産生をサポート。持久力アップなどワークアウト後の利用にも最適。
該当ドリンク例:レッドブル(レッドブル)、モンスター(アサヒ飲料)
疲れた体を無理やり動かそうと、やみくもに栄養ドリンクを飲むのは逆効果。自分の疲れ具合や疲労の原因を見極めて、自分に合った栄養ドリンクで少しでも不調を回復させ、夏の疲れを乗り越えましょう!
構成・文/長岡絢子 Illustrations by Denis Novikov, Photo by takasuu / iStock / Getty Images Plus