2024年、何が流行る? どんな価値観が社会を変える? 『世界と私のAtoZ』『#Z世代的価値観』など、「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに発信する、カリフォルニア在住のライター竹田ダニエルさんに、2024年に流行りそうな10のキーワードを予想してもらいました!

【竹田ダニエルの2024年流行予想まとめ】SNS、ファッション、ビューティ、音楽…これが流行る!10のキーワード

竹田ダニエル

ライター

竹田ダニエル

1997年生まれ、カリフォルニア出身、在住。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストをつなげるエージェントとしても活躍する。2022年11月には、文芸誌「群像」での連載をまとめた初の著書『世界と私のAtoZ』(講談社)を刊行。今年9月には、『#Z世代的価値観』(講談社)も発売。そのほか、現在も多くのメディアで執筆中。

「SNS」では何が流行る? 共感の時代が終わって次にくるのはこれ!

1. 「ミステリアス」であるほうが理想的とされる時代に


例えば、インスタグラムのフォロワーが8800万人以上いる世界的アーティスト、デュア・リパがわかりやすい例だと思います。これまではアーティストとして世界観が統一された写真をインスタに載せていましたが、それが今年の10月9日にすべて削除され、リニューアルしたアカウントでは「この人今どこにいて、何をしているんだろう?」みたいな不思議な写真ばかりを載せるようになった。

あえてクオリティの低い写真を投稿する、“フォトダンプ”という手法は2021年ごろから流行っていましたが、これからは“多くを語らないミステリアスな見せ方”が、SNS上でより付加価値になってくると思います。

アメリカでは最近、デーティング相手がインスタのアカウントを持っていないことがプラスに働いたりもするくらいSNSの立ち位置が変わってきていて、2024年はさらに価値観が変化する気がします。













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2. “共感推し”ではないインフルエンサーの台頭
これまではZ世代のアイコンであるエマ・チェンバレン、ダミリオ姉妹、アリックスアール等のように、「Relatable=共感できる」インフルエンサーが人気でしたが、最近は経済格差の影響もあり、「社会的地位やお金があるインフルエンサーが、社会への違和感を唱えているのを見るのがつらい」という風潮もあります。

逆に、多くの人が共感できないような、桁違いのお金持ちや、突出した価値観を全面に押し出すことで爆発的な人気を誇る人も。これまで、「この人共感できるでしょ?」という見せ方を押し付けられすぎた反動で、逆に「共感できない奇抜なパーソナリティ」や「無理やり共感を押し付けないタイプのリアル」がより注目されてきていると感じます。

「コンテンツ」は何が流行る? 世界を席巻するストーリーや番組はこれ!

3. 「女性が中心」なストーリーの重要性にスポットが!
2023年は、映画『バービー』の世界的ヒットや『ミーン・ガールズ』のリバイバル、コメディ映画『ボトムズ』のヒット、『ゴーストワールド』の再上映など、女性中心のストーリーや女性が監督を務める映画が話題になりました。また、今年の11月からアメリカで公開が始まった『Priscilla』は、エルヴィス・プレスリーの元妻の自伝が映画化された作品で、ソフィア・コッポラが監督。

男性の視線からではない「女性性」が語られることの重要性が話題となり、認められはじめたことで、今後はより女性中心のコンテンツが楽しめるようになってくると感じます。




4. 「韓国 × グローバル」コンテンツがさらに盛り上がる
2023年は、韓国のダンスバトル番組『STREET WOMAN FIGHTER 2』にめちゃくちゃハマって、TikTokに流れてくるBada Leeというダンサーの動画を延々と見ていました(笑)。Badaは『NCT』や『aespa』の振り付けを手がけてきたダンサーで、この番組でさらに人気に。番組自体は韓国語がわからなくてもちゃんとバズる仕組みになっているから、切り抜き動画に視聴者のリアクションをのせた動画が、アメリカでもすごく流行っていました。






また、韓国の映画作品『ソウルに帰る』と『Past Lives』は、2023年にアメリカでも上映され、大変話題になりました。どちらも、移民として国外に移住した主人公が、自分が生まれた韓国に戻ってアイデンティティを探していくという内容。


2024年も、韓国とグローバルの視点がかけ合わさったコンテンツの注目度が上がると思います。個人的にもとても楽しみです!

「ファッション&ビューティ」は何が流行る? アメリカで流行の“Gen X Soft Club”が気になる!

5. “Gen X Soft Club”的世界観
“Gen X Soft Club”とは、1990年代後半から2000年代後半に流行った世界観で、当時流行った近未来的な雰囲気のルックを指します。今年は、例えばビヨンセのライブでもシルバーがドレスコードだったり、今アメリカで再ブームが到来している『COACH』もシルバーのバッグを出していたり。“Gen X Soft Club”的な世界観がこれから更に注目されてくるのではないでしょうか。

加えて、アメリカでは今、ファッションアイテムの価格の高騰が指摘されていて「こんなに値段は高いのに、こんなに縫製が粗雑」みたいな、“deinfluencing動画”=インフルエンスされない動画、がTikTokでたくさん出ています。「昔のもののほうが質がいい」と、ヴィンテージが見直される中で、レトロなデザインや世界観にも注目が集まっています。

6. 複雑じゃない、シンプルなスキンケアの回帰


アメリカでは、レチノールやナイアシンアミドなど、成分の配合率が高いスキンケアブランドが流行っていましたが、必須アイテム以外のでも「数を多く組み合わせればよい」という具合に、まるで自分がプロになったような感覚で色々なアイテムを組み合わせ、逆にスキンバリアが崩れてしまったという人も。その反動として、少ない工程で原材料もシンプルなものに再び注目が集まる気がします。


一時期アメリカでは、薬局で売っている『Cetaphil』というブランドが流行りすぎて、それまで誰でも買えるブランドだったのに値段が高騰したこともありました。これもシンプルなスキンケアが見直され、人気を高めていることを示す一つの現象のように思います。






「消費行動」は何が流行る?“現物メディア”と“手作り”の再発見

7. “現物メディア”の魅力が再発見される


アメリカは日本に比べて紙媒体が多くないので、むしろその価値がプレミア化している印象があります。昔の雑誌を取り寄せてコラージュを作っているZ世代の子たちもいるし、単純に自分の好きなアーティストやセレブが表紙の雑誌を、アーカイブとして残しておきたいという気持ちもありますよね。

最近は特に情報規制によってSNS監視されていることもあり、「アメリカで唯一残されている干渉されない対象は、本」と言われていたり、日本では安室奈美恵さんの曲がストリーミングサービスから消えてしまったり。そういう時代の変化によって、改めて“フィジカル”の重要性が見直されてきていると感じます。













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8. 大量消費離れ、手作りブーム


近年は物価高騰の影響もあり、高いお金を出してもなかなか質のいい服が買えないんですよね。アメリカの都心部は家賃が高いので店舗が出せないブランドも多く、オンラインが一般的ですが、実際に届いてみたら「見た目はいいけど生地はペラペラ」ということもあります。まず、そういう現象にうんざりしている人がたくさんいる。

その結果として、これまで社会の根幹にあった「大量生産・大量消費」に違和感を持っている若者が、手作りのプロセスを楽しんだり、物を買うことから離れていっている印象があります。2024年はさらにそのムーブメントが大きくなりそうです。

「音楽」は何が流行る? 即興性の高い“Z世代ジャズ”がアツい!

9. “Z世代ジャズ”の人気上昇


最近、『Laufey』というアイスランドと中国をルーツに持つジャズのアーティストが注目されています。そもそも、ジャズというジャンルで若い女性、かつアジア系というのも珍しいし、スタンダードな歌い方だけど、歌詞の内容は最近の若者が共感するような恋愛の価値観を反映している。オルタナティブポップスっぽい感じもあり、ジャズを敬遠しがちな若者でも“落ち着くソフトなサウンド”として聴きやすいです。TikTokでの発信も、キャッチーで面白いんですよね。













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『Laufey』は、フィリピンとイギリスをルーツに持つZ世代の人気アーティスト『beabadoobee』ともコラボするなど、これまで近寄りづらかったジャズのイメージを変えてくれたと思います。今年来日して『Blue Note Tokyo』でライブをしていましたが、チケットも即売り切れていました。

10. 即興性の高い「バイラル」音楽
また、今年のSUMMER SONICでソニックステージのトリを務めた世界的アーティスト『Thundercat』や、今年の5月の初来日で全ツアー完売したZ世代のデュオ『DOMi & JD BECK』といった、ちょっとクレイジーな雰囲気かつ即興性の高い音楽も人気です。いわゆる“ハイパーポップ”要素も含みつつ、デスクトップミュージックでは再現できない身体性の高いグルーヴやファンク、そして刺激のある映像ビジュアルも含めて、インターネット文化と親和性の高い「バイラルジャズ」と呼ばれるような音楽が注目されている気がします。

これまでのアプローチではなく、一捻りした音楽に今後はさらに注目が集まると感じています。