ストレスがたまったとき、心が折れそうなとき、あなたは何をしますか? 「思いっきり泣く」「誰かに相談する」「ヨガで体を動かす」……。人間には生まれつき回復力が備わっていて、得意な回復の方法は人それぞれ。自分自身の中にある「強み」に焦点を当て、それを引き出し、回復していくためのストレスコーピング(ストレスに対処する方法)のモデルの一つに「BASIC Ph」があります。イスラエルで生まれたこの「BASIC Ph」がどのようなものかを、BASIC Ph JAPAN代表である臨床心理士・新井陽子さんに詳しくお聞きしました。さらに、どれを自分が得意としているのかチェックする方法とその生かし方、6つのチャンネルについて、詳しく解説します。

「BASIC Ph」とは? イスラエルで生まれたストレスコーピングモデル

「BASIC Ph」とは?

人は困難(ストレス)に出遭ったとき、さまざまな方法でその困難に立ち向かいます。その対処の仕方を6つに分類したのが「BASIC Ph」モデルです。

「BASIC Ph」は、「Belief(信念)」「Affect(感情)」「Social(社会)」「Imagination(想像)」「Cognition(認知)」「Physiology(身体)」の頭文字から名付けられました。

実は私達はストレスに対処するとき、この6チャンネルのいくつかを組み合わせて使っています。自分の得意なチャンネルを知ることで、より「回復力」を高めることができますし、ストレスにぶつかったときにより適切に対処し、早く回復することができます。

日常のストレスや、日々のコミュニケーション、日々の業務の中でも役立てることができます。ストレスコーピングはもちろんですし、コミュニケーションにも使えますよ! 

人間関係にすれ違いが起きるときがありますよね。そのようなとき、実はそれぞれの人の得意なチャンネルが異なっていることによって、すれ違いが起きていることもあるんですよ。なので、「相手がどのチャンネルが得意な人なのか」を見極めることも、コミュニケーションに役立ちます。

仕事の場面でも「BASIC Ph」は役に立ちますよ。例えば相手が上司なら、「認知のチャンネルが得意そうだから、わかりやすく情報を伝えよう」とか、「ソーシャルのチャンネルをよく使う人だから飲み会を開いて仲良くなろう」とか、うまくいくコミュニケーションの方法を考えるヒントになり、それは武器になるはずです。まずは自分のタイプから、知ってみましょう!

自分の得意なチャンネルの調べ方はこう!

自分の得意なチャンネルの調べ方はこう!実践のコツも解説

得意なBASIC Phチャンネルの調べ方①まずは自分のストレス発散法を10個書き出してみる
「仕事でミスをした」「パートナーとうまくいかない」「友達とケンカした」など、ちょっとしたうまくいかないことが起きたとき、自分がどのようなことをしているかを思いついた順に10個ほど書き出してください。書き出すものはどんなことでもOKです。大きなことでも、小さなことでも大丈夫ですが、具体的に書き出してみましょう。

得意なBASIC Phチャンネルの調べ方②チェックリストからよくやる行動をチェック!
書き出したものを、以下にあるリストからどのチャンネルに分類されるかをチェックしてください。全く同じものが載ってなければ、近いものがあるチャンネルを当てはめてください。終わったら、チェックした対処方法をチャンネルごとに数えてください。ある程度偏りが出てくるはずです。対処方法の数が多ければ多いほど、「得意なチャンネル」になります。人によって1〜3個ほど、得意なチャンネルが見つかると思います。


Belief(信念)
社会的理想、倫理的価値、自己信頼感、宗教的信念などにより、アイデンティティを明確に確立することに基づく能力。

【行動例】
出来事に意味付けする。自他を信じる。神に祈る、運命を信じる。「何とかなる」と楽観視する。「ま、いっか」と諦める。自分自身の価値を信じる。経験の意義を探究する。逆境から成長すると捉える。なりたい姿を思い描く。自己啓発本を読む。伝統儀式への参加や礼拝・お祓い。縁起を担ぐ。神社仏閣巡り。座右の銘や格言を信じる。使命感を持つ。自分を鼓舞する。

「〜するべきだ」と考える(べき思考)。自責思考。何かや誰かを盲信する。不合理な信念でも信じ続ける。迷信的思考。ただ耐える。


Affect(感情)
起きた問題に対して泣く、怒る、悲しむ、落ち込む、笑うなどの直接的な感情表現のほか、感情について考えることや、作品や場所、人などによって感情を引き出すことも含まれる。

【行動例】
悲しむ、怒る、泣く、笑うなど様々な感情を表出する。落語やコメディ・お笑いを見て気分転換する。感動する・共感する映画を見て感情を表す。お化け屋敷、絶叫マシーンなどで気持ちを発散させる。日記や文書に気持ちを書く。絵を描く、何かを造る。誰かに気持ちを聞いてもらう。毛布などに包まり安心感を得る。

八つ当たり。感情を隠したりないものにする、罪悪感を持つ。後悔をする。落ち込む。


Social(社会)
親しい誰かと接したり、誰かと作業をしたり、新しいコミュニティを探したり、人や社会とのつながり、役割によって回復する。逆に社会との遮断も含まれる。

【行動例】
家族やパートナーと過ごす。誰かと会う。誰かに相談する。SNSなどで発信する。誰かとつながる。サークルやボランティア活動などを通じて人とつながる。興味関心があることでつながる。父親としての役割や課長としての役割など、役割があることで、困難に対処する。

人から距離を取る。引きこもる。


Imagination(想像)
空想や想像を使うチャンネル。ものの見方を変化させる。頭の中で想像することだけでなく、映画や小説やゲームなどファンタジーの世界に没頭する、創作活動や演じることも「想像」。

【行動例】
現実にはできないことを空想の中でやってみる。別の見方や意味づけができないか再考する(リフレイミング)。ファンタジーやイマジネーションの力を使った気晴らし。コンサートやミュージカルや美術館などアートに触れる。ファッションや創作活動、演劇などクリエイティブな活動。テレビや映画などを観て、想像力を活性化する。ごっこ遊びやテーマパークに行く。

現実逃避的な空想。ギャンブルなどに依存。自分の心を切り離す。


Cognition(認知)
情報収集や問題解決に向けた思考、優先順位をつけるなど、問題に向き合って回復につなげる。他にもクイズやパズル、謎解きなど頭を使うストレス発散も含まれる。

【行動例】
情報を収集し、論理的な分析、優先順位などを考えて現実的な戦略を立てる。やることリストを作る。ブレーンストーミングをする。タイムラインを考える。データを活用する。言語化、可視化する。計画を立てる。本を読む。資格を取る。過去の経験から解決策を探る。クイズやパズル、謎解きゲームなど。

考えることを放棄する。批判的に思考する。


Physiology(身体)
「身体を動かす」「身体に働きかける」チャンネル。自身の身体の動きだけでなく、マッサージやマインドフルネス、お酒や煙草など、身体に影響を与えるものも含まれる。

【行動例】
体を動かす、スポーツをする。散歩する。食事やおやつを食べる。薬やサプリをとる。お酒を飲む。タバコを吸う。寝る。料理を作る。お風呂に入る。マッサージ。深呼吸や発声。掃除する。セックス。ストレスが身体症状として出る(胃痛・頭痛・皮膚炎など)。

過度な運動。飲みすぎる。自棄食い。拒食。過剰な服薬。自己破壊的な行動。

「Belief(信念)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Belief(信念)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのB「Belief(信念)」とは
「私は日本人だ! 大和魂で生きていかねば!」のように、何かの信念を支えにすること。「今日は赤信号で止まってばっかり。……ってことはゆっくり行けってことなのかも!」と、起きたことに意味づけをすること。信念に初詣に行ってお願い事をしたり、キリスト教で神様に祈って心を支えるようなことも「Belief(信念)」です。

伝統的な振る舞いを大切にして、それが結果として回復につながることも含まれます。お葬式なども伝統的な振る舞いが含まれますよね。

信念のチャンネルを使う人は、その拠り所のおかげで「ま、いっか」と思えることが強さです。バカボンのパパの「これでいいのだ」もBだと思います(笑)。

「Belief(信念)」のキーワード
信念 価値 宗教 伝統

「Belief(信念)」を使ったストレス対処法
出来事に意味付けする。自他を信じる。神に祈る、運命を信じる。「何とかなる」と楽観視する。「ま、いっか」と諦める。自分自身の価値を信じる。経験の意義を探究する。逆境から成長すると捉える。なりたい姿を思い描く。自己啓発本を読む。伝統儀式への参加や礼拝・お祓い。縁起を担ぐ。神社仏閣巡り。座右の銘や格言を信じる。使命感を持つ。自分を鼓舞する。

「〜するべきだ」と考える(べき思考)。自責思考。何かや誰かを盲信する。不合理な信念でも信じ続ける。迷信的思考。ただ耐える。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き延びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

「Affect(感情)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Affect(感情)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのA「Affect(感情)」とは
感情を出す、ということを回復につなげるチャンネルです。その出来事に対し、直接的に泣いたり怒ったりすることはもちろん、何かを通じて感情を発散することも「Affect(感情)」のストレスコーピングです。

例えば、失恋したときに、失恋の映画や音楽に浸ってさめざめと泣くのはこのチャンネルです。つらいことがあったから漫才を見て笑って元気を出す! というストレス発散もこれに含まれます。ストレスによって発生した感情と同じものでなくてもOK。「感情を通じて回復する」のがこのチャンネルなんです。

逆に、何も感じなくなる“麻痺”も「Affect(感情)」。例えば、“火事場の馬鹿力”がわかりやすいですね。あれは、恐怖を感じていると逃げられなくなるから、感情の関与を切っている状態。感じなくすることで生き延びる……という立派な「Affect(感情)」チャンネルの対処法です。

「Affect(感情)」のキーワード
感情 情動 感情表現 表出 受容

「Affect(感情)」を使ったストレス対処法
悲しむ、怒る、泣く、笑うなど様々な感情を表出する。落語やコメディ・お笑いを見て気分転換する。感動する・共感する映画を見て感情を表す。お化け屋敷、絶叫マシーンなどで気持ちを発散させる。日記や文書に気持ちを書く。絵を描く、何かを造る。誰かに気持ちを聞いてもらう。毛布などに包まり安心感を得る。

八つ当たり。感情を隠したりないものにする、罪悪感を持つ。後悔をする。落ち込む。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き延びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

「Social(社会)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Social(社会)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのS「Social(社会)」とは
人とのつながりを求めることで回復するのが「Social(社会)」のチャンネルです。困ったら誰かに相談するとか、会いに行くとか。SNSで「こんなことがあった!」と発信することもそうですね。

あと、社会的な役割をまっとうすることで、困難な状況を生き抜く……というものもあります。東日本大震災のとき、現地の区役所などの公務員の方がすごく働いていたことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

彼らの多くも被災者で、家族も被災していて、家も失っていたかもしれません。ですが、そんな状況であっても、公務員として市民を守ることをまっとうされたのは、公務員という地域に奉仕するという役割、つまり「Social(社会)」を使って生き抜こうとした、というところも大いにあると考えています。

また、逆に「少し距離をとってあえてひとりになる」という社会から自分を遮断することも、「Social(社会)」の回復法です。SNS断ちもこれに含まれるかも知れません。

「Social(社会)」のキーワード
他者 役割 組織 社会的スキル

「Social(社会)」を使ったストレス対処法

家族やパートナーと過ごす。誰かと会う。誰かに相談する。SNSなどで発信する。誰かと繋がる。サークルやボランティア活動などを通じて人と繋がる。興味関心があることでつながる。父親としての役割や課長としての役割など、役割があることで、困難に対処する。

人から距離を取る。引きこもる。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き伸びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

「Imagination(想像)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Imagination(想像)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのI「Imagination(想像)」とは
「Imagination(想像)」はその名のとおり、想像力を回復に使うチャンネルで、大人や日本人が忘れがちなチャンネルでもあります。頭の中で空想したり、物語やファンタジーの世界に没頭したり、自ら創作したりすることで、回復していくんです。

美術館にはたくさんの絵がありますね。つまり、私たち人間は、太古の時代からたくさんの絵を描いて生きてきている……ということです。その中には、意識的でも無意識的でも、回復のために描かれたものもきっと多いはずです。

また、現代では映画やドラマ、マンガなどたくさんの物語が作られています。それは、創作された物語や世界を観ること、または自分の手で創り出すことで生き延びている人が多くいることを示しているのではないでしょうか。

「Imagination(想像)」のキーワード
遊び 創造性 ファンタジー 直感力 ユーモア

「Imagination(想像)」を使ったストレス対処法
現実にはできないことを空想の中でやってみる。別の見方や意味づけができないか再考する(リフレイミング)。ファンタジーやイマジネーションの力を使った気晴らし。コンサートやミュージカルや美術館などアートに触れる。ファッションや創作活動、演劇などクリエイティブな活動。テレビや映画などを観て、想像力を活性化する。ごっこ遊びやテーマパークに行く。

現実逃避的な空想。ギャンブルなどに依存。自分の心を切り離す。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き延びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

「Cognition(認知)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Cognition(認知)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのC「Cognition(認知)」とは
情報を収集・整理して、戦略を立てて知的にそして現実的に問題解決をしていくチャンネルです。遅刻しそうなときにスマホで時刻表を確認するとか、わからないことがあるときにまずGoogleで検索してみる……なんてことは、まさに「Cognition(認知)」です。つまりこれって、私達はけっこうよく使っているチャンネルなんですよ。大人は自分で解決できそうな問題は、「Cognition(認知)」で乗り越えることが多いですよね

とても問題対処に強い方法ではありますが、「正解の問題解決の方法がない」場合などには困りごと自体の情報収集や分析だけでは対応しづらいこともある、ということも覚えておくと良いと思います。

確かに、認知的な対処ではうまくいかない時もあるでしょう。そんな時はクイズやパズルなどで息抜きや頭の体操などをしたり、「問題解決」から離れたストレスコーピングを試せるといいかもしれません。でも実はそれも「Cognition(認知)」のチャンネルなんですよね。

「Cognition(認知)」のキーワード
情報 知識 問題解決 現実

「Cognition(認知)」を使ったストレス対処法
情報を収集し、論理的な分析、優先順位などを考えて現実的な戦略を立てる。やることリストを作る。ブレーンストーミングをする。タイムラインを考える。データを活用する。言語化、可視化する。計画を立てる。本を読む。資格を取る。過去の経験から解決策を探る。クイズやパズル、謎解きゲームなど。

考えることを放棄する。批判的に思考する。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き延びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

「Physiology(身体)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

「Physiology(身体)」のチャンネルとストレス解消法を詳細解説!

BASIC PhのPh「Physiology(身体)」とは
これは身体に関わることをすべてを含みます。「運動して発散する」はもちろんそうですし、「お酒を飲む」「おいしいものを食べる」のような、身体の中に何かを入れることも、マッサージや鍼灸などでリラックスすることもPhです。

逆に落ち込んだときに「何も食べなくなる」「ひたすら寝る」のように、身体へのアプローチをやめたり、動かなくなったりすることもPh。

また、自傷行為や過食、飲みすぎることなどもPhです。「BASIC Ph」では、ストレスコーピングに対し、「いい/悪い」の判断はしません。なので、ご自身が「本当はやめたほうがいい」と思っているような行為であっても、「BASIC Ph」においては「Phのチャンネルが得意であるという根拠」となります。

「Physiology(身体)」のキーワード
行動 活動 リラクゼーション 実用的

「Physiology(身体)」を使ったストレス対処法
体を動かす、スポーツをする。散歩する。食事やおやつを食べる。薬やサプリをとる。お酒を飲む。タバコを吸う。寝る。料理を作る。お風呂に入る。マッサージ。深呼吸や発声。掃除する。セックス。ストレスが身体症状として出る(胃痛・頭痛・皮膚炎など)。

過度な運動。飲みすぎる。自棄食い。拒食。過剰な服薬。自己破壊的な行動。

上記の中に、やったことはないけれど興味があるものがあれば、挑戦してみると、ストレス対処の方法が増やせるでしょう。また、コーピングに「いい/悪い」はない、というのがBASIC Phでの考え方ではありますが、「より安全に」「より長く生き延びる」ためには、やはりポジティブなものを選んでいくほうがいいとも考えています。悪いから手放すのではなく、より長く生き延びるために健康的な方法へ乗り換える……というイメージです。なので、グレーのマーカーを引いた部分のコーピングに頼っている方は、余裕やエネルギーがあるときに、ぜひ適応的なものを試してみてほしいです。

参考文献:『緊急支援のためのBASIC Phアプローチ――レジリエンスを引き出す6つの対処チャンネル』(遠見書房)ムーリ・ラハド,ミリ・シャシャム,オフラ・アヤロン 編
佐野信也,立花正一 監訳
新井陽子 角田智哉 濱田智子 水馬裕子 丸田眞由子 岡田太陽 柳井由美 訳

BASIC Ph JAPAN代表

新井陽子

臨床心理士、公認心理師。BASIC Ph JAPAN代表。日本EMDR学会所属。公益社団法人被害者支援都民センター勤務。東日本大震災の復興支援に関わり、その際にBASIC Phとその提唱者・ムーリ・ラハド氏と出会う。

取材・文/東美希 イラスト・企画・構成/木村美紀