おりものやにおいなどの症状でわかる性感染症もあります。性感染症は、10代20代の人たちがおもにかかりやすい病気。おりものやにおいのほか、どんな症状に注意したらいいのか? どんな性感染症にかかりやすいのか? を吉本裕子先生に伺いました。また、性感染症を予防するための方法も紹介します。

吉本裕子先生のイラストによる、連載第21回の扉

10代、20代で気をつけるべき性感染症とは?

増田:性感染症は、若い世代に多い病気です。例えば女性では、性感染症のクラミジア感染症、淋菌感染症、尖圭コンジローマは20代前半がピーク。性器ヘルペスは20代全般にピークがあります。一方、男性は、クラミジア感染症と淋菌感染症は20代後半、尖圭コンジローマは20代後半から30代、性器ヘルペスは30代前半がピークです。[*性感染症の現状 (2012年) 公益財団法人性の健康医学財団 (jfshm.org) より]

おりものがサインになるクラミジア感染症や腟トリコモナス症、淋菌感染症などの性感染症以外にも、10代、20代が気をつけたい性感染症はありますか?

吉本先生:そうですね。性感染症には、クラミジア感染症、腟トリコモナス症、淋菌感染症以外にも、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、梅毒などがあります。HIV感染症/エイズもそのひとつです。おりもの以外にも、性感染症の可能性がある症状には、かゆみ、痛み、出血、イボなどがあります。女性の性感染症の危険性がある内容をチェックリストにしてみましたので参考になさってください。

【女性の性感染症 危険度チェック】

女性の性感染症危険度チェック

吉本先生:8~15の症状があったら、性感染症を疑って、婦人科に検査に行ってください。また、症状がなくても、1~4があれば年1回は検査を受けたほうがいいでしょう。それ以外は、普段と違うおりものや症状があるときだけ受診すればいいと思います。パートナーがいて妊娠を希望している人は、性感染症の検査を受けておくことが大切ですね。

性感染症はどうすれば予防できる?

増田:危険度チェック、わかりやすいです! 普段と違う症状があったら、ためらわずに婦人科を受診したほうがいいですね。性感染症にかからないように予防するにはどうしたらいいでしょうか?

吉本先生:性感染症は、セックスをしなければ感染しません。したくないときはNO!と言う勇気も大切です。セックスは特定の人とだけするようにし、不特定多数の人とのセックスを避けることも大切です。そして、セックスのときはコンドームの使用は必須です。パートナーがコンドームを使おうとしないときも、NO!と言う勇気を持ちましょう。

性感染症の予防のためには、セックスのときに最初からコンドームを使用することが重要です。セックスの前には排尿し、シャワーを浴びて、お互いの体を清潔にしてから。また、オーラルセックスでも感染することがありますので注意が必要です。

増田:婦人科ではどんな検査をするんでしょう? また万が一、性感染症がわかったときにはどんな治療になりますか?

吉本先生:婦人科では、まずデリケートゾーンの状態を見て、内診で腟や子宮の粘膜の状態を調べます。おりものを採取して、細菌やウイルスの有無を調べたり、場合によっては血液検査をすることもあります。ほとんどの性感染症が2週間程度で治ります。でも個人差もあるので、自己判断で止めたりせず、完全に治るまできちんと治療を続けることが大切です。医師の許可が出るまでは、セックスは控えましょう。

また、感染がわかったら、必ずパートナーと一緒に治療してください。男性は泌尿器科を受診します。女性がよくなっても、パートナーが病原体を持っていれば再感染してしまいます。二人で一緒に、同時に治すことが大切です。

セックスの際は最初からコンドームを使用することが大切

性感染症は妊娠、出産にも影響する

増田:性感染症は、将来の妊娠や出産、そして産まれてくる赤ちゃんにも影響するといわれていますが、どんな影響が出るのでしょうか?

吉本先生女性がかかる感染症として最も多いのはクラミジア感染症です。全年齢で20代が最も多く、その次が15~19歳と30~34歳です*。(*NID国立感染症研究所性器クラミジア感染症の発生動向2020年より)

男性の場合は症状が軽いのですが、女性の場合は、子宮内にクラミジアが入ると、おりものが増え、子宮頸管炎になります。するとHIVなどのほかの感染症にかかるリスクが上がります。

さらに進行すると、卵管に炎症を起こすクラミジア卵管炎、骨盤内の腹膜炎になり、卵管が詰まってしまうこともあります。そうなると、子宮外妊娠や不妊症のリスクが高まります。妊娠中は、流産や早産の危険性もあり、産道を通して赤ちゃんにうつると結膜炎や肺炎を引き起こすこともあります。

けれども、子宮頸管炎の段階で治療をすれば、不妊症にはなりません。卵管炎を起こす前に治療することが大切です。子宮頸管炎のサインは、おりもの。おりものの量が増えたり、普段と違うおりものに気づいたら、すぐに婦人科を受診してください。

クリニックでの吉本先生の画像

パートナーと、お互いの体を考え合える関係を

増田:性感染症を防ぐために、おりものに敏感になることは大事なのですね。そして、パートナーがいて、将来、妊娠、出産を考えている人は、赤ちゃんのためにも性感染症の検診を受けたほうがいいですね。

吉本先生:二人できちんと話し合って、お互いの体のことを考え合える関係を築いていただきたいと思います。予定外の妊娠も性感染症も、パートナーのせいだけではありません。女性自身が「コンドームをつけて!」と言える自分でいてほしいですね。

増田:吉本先生、4回にわたって、おりものから性感染症、そしてコンドームによる感染予防の話まで、女性として知っておくべき大切な知識を本当にありがとうございました!

吉本裕子(よしもとゆうこ)先生

吉本レディースクリニック院長

吉本裕子(よしもとゆうこ)先生

産婦人科医。日本専門医機構認定専門医。高知医大(現・高知大学医学部)卒業。金沢大学付属病院、富山市民病院を経て現職。NPO法人女性医療ネットワーク理事、富山市医師会理事、性暴力被害ワンストップ支援センター富山協力医師、女性被害者支援ネットワーク医師、富山大学人間発達科学部附属中学校評議員。吉本レディースクリニックは、病気治療だけでなく、女性の人生に寄り添い、心身の拠り所となるクリニックとして定評がある。『Rp.+(レシピプラス)VOL.21 NO.1 2022冬「ホルモンとくすり」』(南山堂)共同執筆。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

取材・文/増田美加 イラスト/itabamoe Photo by grinvalds / iStock / Getty Images Plus 企画・編集/浅香淳子(yoi)

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