yoi読者から寄せられた生理にまつわる疑問や悩みに、専門医がアドバイス! 生理痛、経血量、PMS、セルフケアまで伺いました。自分と似たお悩みへの回答をぜひ参考に。

お話を伺うのは…
小野陽子先生

産婦人科医/心療内科医

小野陽子先生

日本産科婦人科学会専門医。心身医療専門医。日本女性医学学会ヘルスケア専門医。日本女性心身医学会認定医師。女性の心身の不調の背景には社会的・環境的要因が影響していると感じ、産婦人科研修後、心療内科でも研修。女性が自分自身で心と体の対話を大切にできるようサポートしていく女性医療を心がけている。2020年にAddots GINZAを設立し、女性のためのオンライン相談室「女性の心と体の相談室」をスタート。

Q.生理痛のとき、鎮痛剤はあまり飲まないほうがいいですよね?

Q.生理痛のとき、鎮痛剤はあまり飲まないほうがいいですよね?

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「生理痛は時々あるけれど、鎮痛剤を飲むとクセになってしまいそうで、お腹や腰を温めたり我慢したりして、なんとかやり過ごしています。やっぱり鎮痛剤ってあまり飲まないほうが体にいいですよね? もし飲むとしたら、どのタイミングがいいのでしょうか?」

A.生理痛を我慢してしまうのは逆効果!
「鎮痛剤は体によくない」「クセになる」と思っている方が実はたくさんいます。しかし、月に1度、1週間ほどの月経中に服用する程度なら、用法・用量を守って服用すれば問題ありません。むしろ、痛みが強い場合には何か病気が隠れていないかを確認する絶好のチャンスです。婦人科を受診して特に問題がなければ、低用量ピルを開始したり、市販の鎮痛剤で痛みをコントロールしながら快適に過ごしましょう。ただ、用法・用量を守って鎮痛剤を服用しているのに効かない、痛みが毎周期ある、寝込んでしまうほどの痛みがあるなどの場合には、婦人科の診察が必要です。

 

Q.生理痛が起きるのはなぜ?

Q.生理痛が起きるのはなぜ?

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「昔は1度も感じたことのなかった生理痛が時々起こるようになり、特に経血量が少ない日に痛みを感じるようになりました。そもそも、生理痛が起きるのはなぜですか? そして、生理痛を感じるようになったのは、何か病気のサインなのでは?と不安です」

A.子宮を収縮させる「プロスタグランジン」の過剰分泌によるもの
生理が終わると、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増加し、受精卵が着床(妊娠)しやすくなるように子宮内膜が少しずつ厚くなっていきます。排卵された卵が受精しなければ、子宮内をリセットするために子宮内膜が剥がれ落ちて経血として流れ出ていきます。これが月経のメカニズムです。このとき、子宮を形成している筋肉を収縮させて子宮内膜を血液とともに外へ押し出す物質である「プロスタグランジン」が産生されます。プロスタグランジンが必要以上に分泌されると、子宮の筋肉が強く収縮して、痛みも強くなるのです

Q.20代後半から経血量が減ってきたけど大丈夫?

Q.20代後半から経血量が減ってきたけど大丈夫?

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「20代半ばまでは経血量が多くて、夜用のナプキンが2時間ぐらいしかもたないほど。ところが、20代後半からは逆に経血量が減ってきて、少ないときは4日で経血がほとんど出なくなります。20代後半から経血の量が急に減るってよくあることなのでしょうか?」

A.年齢による正常な反応です
年齢が上がるとともに経血量が多少減ってくることは、生物学的に正常な反応です。初潮が始まってから5年程度は女性ホルモンの分泌が安定しないため、過多月経や月経困難が起こりやすい時期といわれています。年齢が上がると女性ホルモンの分泌が安定するとともに子宮も成熟してくることによって、月経に伴うトラブルは落ち着いてきます。ただし、ナプキンを替える必要がないほど経血量が極端に少ない場合は「過少月経」、2日以内で終わるほど短い場合は「過短(かたん)月経」といって、ストレスなどによって女性ホルモンの分泌が乱れている可能性があります。極端に減った場合は気軽に婦人科で相談してほしいと思います。

Q.レバーのような塊は一体何ですか? 最近、大きくなってきたので不安です

Q.レバーのような塊は一体何ですか? 最近、大きくなってきたので不安です

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「昔から生理のときにレバーみたいな塊が出ていたけれど、30代になってから明らかにサイズが大きくなっていて少し不安です。この塊ってみんな出てくるものですか? 放っておいても大丈夫なのでしょうか?」

A.塊の正体は、はがれ落ちた「子宮内膜」です
妊娠が成立せず、不要になった子宮内膜がはがれ落ちて、はがれた部分の血液とともに排出されたものが経血です。月経量が多い場合には、はがれ落ちた子宮内膜の量が多くて処理が追いつかず、固まったまま出てくることがあります。この塊が、レバーのように見えるものの正体です。通常、経血量が急激に増えることはありません。経血が増える理由としては、婦人科の病気などによる「過多月経」になっている可能性があります。レバーのような塊が出ていること自体、経血量が多いことのサインでもあります。

Q.経血量が異常に多くて困っています

Q.経血量が異常に多くて困っています

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「経血の量が異常に多くて、普通の昼用ナプキンでは間に合わず、夜用やオムツタイプを使っています。2日目は多い日用のタンポンが2時間もちません…。服やソファなどを汚してしまうこともあるので、頻繁にトイレに行くのが癖になりました。これってもしかして異常なことでしょうか?」

A.夜用ナプキンでも2時間もたない場合は注意
1回の月経周期における正常な経血量の目安は、トータルで20~140mlといわれ、個人差があります。また、この方のように、多い日用のタンポンが2時間もたない場合は、経血量が多い「過多月経」の可能性が考えられます。500円玉以上のサイズのレバーのような塊が出る。夜用ナプキンでも2時間もたない。タンポンとナプキンを併用しても不安が残る。このうちひとつでも当てはまる場合は、過多月経かもしれません。早めに婦人科を受診してください。

Q.生理前は食欲が増して自己嫌悪…気持ちの揺れもどうにかしたい

Q 生理前は食欲が増して自己嫌悪…気持ちの揺れもどうにかしたい

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「生理前は食欲が増して、太りたくないのにたくさん食べてしまって自己嫌悪。ずっと楽しみにしていた友達との約束も急に行きたくなくなったり、色々なことがどうでもよくなったりします。自分でもどうしたらいいのかわかりません。」

A.原因は女性ホルモンの影響。カフェインと砂糖の摂取を減らすことで症状緩和につながることも
月経前や月経中は、女性ホルモンの影響によって血糖値が下がるので、無性に甘いものを食べたいと感じやすくなるようです。さらに月経前は女性ホルモンのひとつである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が多く分泌され、妊娠に備えて水分や栄養などを体に蓄えようとするのでむくみやすくなり、体重が増えることも珍しくありません。また、PMSは血糖値の急激なアップダウンが症状の悪化につながるといわれているので、甘いものが欲しいと感じる方は、まず先に野菜スティックやスープなどを口にしてから甘いものを食べると、血糖値の上昇をマイルドにコントロールできます。甘いものやコーヒーなどのカフェイン、アルコール類の摂りすぎは、症状を軽減するどころかさらに悪化させてしまいます。完全に断つ必要はありませんが、摂取量をやや減らすことが症状緩和につながると考えましょう。 

Q.生理前はとにかく眠くて動けません

Q 生理前はとにかく眠くて動けません

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「出産後からPMSと思われる症状に悩むようになりました。生理前がはじまる1〜3日前は尋常じゃないくらい眠たくて、体もダルくなるので、家事がほとんどできず、ひたすら寝続けます。セルフケアで対処できることはありますか?」

A ベッドではスマホを手放し、目覚めたら朝日を浴びるなど快眠につながる工夫を
排卵後から月経がはじまるまでの10〜14日間は、基礎体温が0.3〜0.5℃高くなる「高温相」にあたり、体温が少し高めの状態が続くので、眠くなるのは自然なことといえます。また、PMSの症状は、体調や精神状態の影響を受けやすいため、疲れやストレスがあると強く現れる可能性があります。特に睡眠の質低下や睡眠不足は精神的なストレスにつながるので眠りにつく前はゆったり過ごす、ベッドではスマートフォンを触らないなど、快眠につながる工夫を心がけましょう。毎朝、朝日を浴びることも大切。体内時計がリセットされることで、睡眠のリズムも整い質のいい睡眠につながります。

Q.生理前からイライラしすぎて人間関係にも影響が…

Q.生理前からイライラしすぎて人間関係にも影響が…

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「20代前半から、生理前・生理中・生理後まで続く気分の不安定に悩まされています。イライラがひどくて、ちょっとしたことでキツイ言葉を相手に言ってしまい、人間関係がどんどん悪くなっていきました…」

A.PMDD(月経前不快気分障害)の可能性も。我慢せず婦人科の受診を
イライラする気持ちは、精神を安定させる働きを持つ脳内の神経伝達物質「セロトニン」の分泌が低下することが原因で起こります。イライラして感情がコントロールできず、自分が自分でないような気がする場合は、我慢せずに婦人科を受診しましょう。PMS(月経前症候群)の精神症状がより重いタイプの「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性もあります。症状に対する対症療法、漢方薬、低用量ピル、IUS(黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システム)を含むホルモン療法などで対応していきます。

Q.吹き出ものや気分の落ち込み…もしかして、これがPMS?

Q 吹き出ものや気分の落ち込み…もしかして、これがPMS?

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「生理の10日前ぐらいからドカ食いが始まり、あごの周辺に吹き出物がでてきます。眠気とだるさ、むくみ、そして毎回ではありませんが気分の落ち込みがあります。これがいわゆるPMSというやつでしょうか? そもそもの原因って何ですか?」

A.身体症状と精神症状がひとつでもあり、3周期以上連続した場合はPMSと診断
月経のある女性の実に70~80%が、月経前に何らかの症状を抱えているともいわれます。その症状は多岐にわたりますが、胸の痛みや張り、手足のむくみなどの「身体症状」と、怒りっぽくなる、落ち込むなどの「精神症状」とに大きく分けられます。この症状が月経前の5日間にひとつでもあり、3周期以上連続した場合はPMSと診断されます。婦人科では不快な症状に対する対症療法、漢方薬、低用量ピル等で対応していきます。内診(婦人科的な診察)は必須ではないので、まずは相談だけでも受診を。