今年、第1子を出産した性教育YouTuberのシオリーヌさん。連載『SAY(性) HELLO!』では、出産を振り返って思うことや、始まったばかりの育児について、3回にわたってお届けします。第1回では、初めての出産にフォーカス。助産師でもあるシオリーヌさんが、当事者としてお産を経験して感じたことを伺いました。

シオリーヌさん

初めての出産は「大満足」、その一語に尽きる!

お産にはふたつの"つらさ"がある!? シオリーヌの出産体験記 Vol.1_2

—— 今年の夏頃に第1子を出産したシオリーヌさん。初めての出産はどのような体験でしたか?

大満足でした! そのひと言に尽きますね。

—— 素敵です…! どのような点で「大満足」だったのでしょうか?

スムーズなお産のために「できる努力は全部しよう」と思っていたので、それがほぼすべて実現できたことが大きかったです。陣痛が軽いうちにシャワーを浴びておくことや、食べられるものをきちんと食べてエネルギー補給をしておくことなど、頭の中でシュミレーションしていたことを計画通りに実行できたと思います。

そして幸運なことに、お産自体がわりとスムーズで。赤ちゃんが下りてくるときの感覚を味わう余裕もあったし、出てくる途中の赤ちゃんの頭を触って確認したりと、冷静さも残っていたと思います。陣痛の前に破水するなど予想外のでき事もありましたが、つくしのサポートもあり、全体としては思い描いていたお産ができた。そういう意味で、とても満足です!

知識があれば、出産の不安に立ち向かえる

シオリーヌさん

—— 思い描いていたお産ができたのは、事前の準備や、助産師としての経験も関係あるのでしょうか。

そうですね。実際に出産してみて思ったのが、"知識があるのは強い"ということ。「陣痛が徐々に強くなってきているな」とか「赤ちゃんが下りてきている感覚があるな」とか、自分のお産が順調に進んでいるのか、ある程度判断がつくんですよね。それが安心感につながりました。

というのも、お産のつらさには2種類あると思っていて。ひとつは、お産そのものの痛さに耐えなければいけない、というつらさ。もうひとつは、先の見えない不安に対するつらさです。「今でもかなり痛いのに、どこまで痛くなるんだろう?」とか、「この痛みは本当に正常なのか?!」といった不安がなくなると、それだけですごく気持ちがラクになるんですよね。だから、"知識があるのは強い"。助産師としても妊婦さんに情報を伝える努力が、もっと必要だなと実感しました。これは私にとっても、今後の課題になりましたね。

シオリーヌさん

他人に弱音を吐くのが苦手…。それは出産時も

シオリーヌさん

—— パートナーのつくしさんから見た立ち会い出産の体験談は連載でも紹介していますが、シオリーヌさんが立ち会い出産を希望したのはなぜでしょうか。

陣痛中、助産師さんもつきっきりでいてくれるわけではないんです。でも、特に痛みが強いときは、誰かに腰をさすってもらえるだけですごくラクになる。痛みの感覚が全然違います。そのサポートをお願いしたくて、つくしに立ち会ってもらうことにしました。

もちろん理由はそれだけではなく、心を許した家族がそばにいるというのが、私にとってはすごく大切で。性格的に他人にうまく弱音を吐けないタイプだし、医療従事者に対してどこか気を遣ってしまうところがあるので…「何を言っても受け止めてくれる」と安心できる存在がいることが、支えになりました。新型コロナウイルス感染症の影響で、産んだあとの面会はできませんでしたが、二人三脚で乗り越えた感がありましたね。

「立ち会い出産」は "ただその場にいればいい" わけではない!

シオリーヌさん

—— シオリーヌさんは出産の様子をYouTubeで公開していますね。動画を見ると、つくしさんのサポートぶりがうかがえました。

正直、YouTubeではいいところだけを切り取ってお見せしているという大前提はありますが(笑)。私も助産師として、さまざまな立ち会い出産の現場を見ていくなかで、苦しむ産婦さんのワキでどうしていいかわからず、棒立ちしているパートナーの方もたくさんいました。両親学級に二人で一緒に来てもらえたら、お産の流れや立ち会い出産の心得を伝えられるのですが、仕事の都合もあるしなかなか難しいですよね。でも今は、情報を得られる場所もたくさんある。出産の前に男性側にも準備が必要だという考えは、まだ一般的になっていないのだと思います。

—— 立ち会い出産は、言葉通り「出産の場にただ立ち会っていればいいもの」ではないと。

アパートを退去するときの立ち会いみたいに、「とりあえず形式的にその場にいればOK」と思う人もいるのかもしれない(笑)。でも、立ち会うパートナーにも、できることや果たす役割がたくさんある、ということが広く伝わってほしいです。「立ち会い」という言葉がよくないのかな…。「出産サポート」とか「出産参画」みたいな名前に変えたほうが、伝わりやすいかもしれませんね!

—— 面白い! 最近では「育休」のことを「育業」と呼ぶ動きも出てきていますしね。

シオリーヌさん

次回は、子育てについて、復帰したばかりの仕事との両立について伺います。お楽しみに!

取材・文/板垣千春 写真/橋本美花 企画・編集/種谷美波(yoi)