双子のマナとカナ、ユウキ、ユナの4人から成る、NEO - ニュー・エキサイト・オンナバンド、CHAI(チャイ)の連載『CHAISM(チャイズム)』。今回は、アロマンティック・アセクシュアルの二人が主人公のドラマ『恋せぬふたり』(NHK総合1、毎週月曜 22:45〜23:15放送)のために書き下ろした、新曲『まるごと』に込めた想いや、ドラマの話題から広がった、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み、偏見)についてのトークをお届けします。
※今回は、マナさん、カナさん、ユナさんの3名が参加。ユウキさんは、ほかのお仕事のため不参加です。
▲新曲『まるごと』のミュージックビデオの公開とともに、CHAIのアーティスト写真も刷新。yoiでも語ってくれたバンドカラーのピンクを身にまとい、ビビッドなカラーメイクが目を引く。
どんな違いも“まるごと”愛そう。生きやすい社会を目指して
(右)マナ (左)カナ 衣装/すべて本人私服
——アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない恋愛的指向)・アセクシュアル(他者に性的欲求を抱かない性的指向)の二人が主人公のドラマ『恋せぬふたり』。この作品のために書き下ろした、新曲『まるごと』は、どのような作品ですか? また、主題歌のオファーをもらったときのことを教えてください。
マナ 主題歌の話をもらったとき、性のあり方はさまざまだってことを、先陣を切って広めようとしている人たちがいることがうれしかった。CHAIも先陣を切って、世の中を変えていけるような活動をしていきたいと思っているから一緒だって! あと、このドラマが掲げている大きなテーマは、私たちのバンドのテーマ「セルフラブ」だと思うの。そういった点でも、このドラマにはシンパシーを感じて、主題歌を担当させてもらえて光栄だった。
『まるごと』のサウンドは、“ロマンティック”と“ノスタルジック”がテーマ。ユウキが作詞した歌詞には、「どんな違いも認め合おうよ」ってメッセージが込められてる。この曲を聴いて、今生きづらさを感じている人が、少しでも生きやすくなったらいいなって思う。
ユナ 私は正直、主題歌の話をもらうまで、アロマンティック・アセクシュアルというセクシャリティについて知らなかったんだけど、これを機会に知ることができてよかった。
ドラマのあらすじを読んだ感想は、『まるごと』に込めたメッセージのとおり、みんな違って、みんないいんだってこと。あと、ジェンダーやセクシャリティーは関係ない、人はみんな素晴らしいんだって再確認できた。この『恋せぬふたり』というドラマは、社会が多様性の大切さにやっと気づきはじめた今だからこそ生まれた作品のひとつだと思うの。今後もこういった作品が増えていくといいよね。
CHAI - まるごと - Official Music Video
これって共感されないのかもって思うこと、たまにあるよね。それって本当に悪いのかな? 自分のそれも、他人のそれも、恥ずかしいことにはしたくない。だってきっと”違い”って敵じゃないから。ちょっとずつ違って、ちょっとずつ同じを、全部まるごと愛せたらいいな。そんな願いを込めて。YUUKI
Sometimes you feel like no one empathizes with you. But is that really a bad thing? I don’t want to make my thing, or someone else’s thing, something to be ashamed of. Because our ‘differences’ may not be our enemies. I wish we could love each other’s little differences and little similarities entirely –that’s the hope behind this song.
(YouTube備考欄より)
——ジャケット写真やミュージックビデオの制作秘話を教えてください!
他人の言葉に左右されない。いいイメージを持つことが大切!
——社会に出ると、自分とは異なる価値観を持つ人と接する機会が多くあると思います。多様な価値観を持ちながらも、まわりといい関係を築くコツはありますか?
ユナ コツは、やっぱり“違いを認め合う”ことに尽きるかな。「そういう考えもあるんだね。でも、私はこうだよ!」って、お互いの違いを面白がることができると、いい関係を築けると思う。ちなみに私は、自分と異なる考えを持つ人に出会うと、なぜそう考えるのかに興味が湧いて、分析したくなるタイプ(笑)。
でも、いろんな人の考えや価値観に触れていくなかで、「私の考えってあの人より劣ってるのかな?」とか、比較して落ち込んじゃうときもあると思うんだ。そういう気持ちに陥りそうになったときは、「違ってもいい」ってことをまた思い出してみるといいかも。
マナ 私が心がけているのは、「自分の考えは、相手にきちんと伝える」。自分が嫌だと感じたことがあれば、嫌だと相手に“愛を持って”言うようにしてる。価値観が違う相手との関係って、断ち切るのはラクだと思うの。でも、きちんと伝えないと、相手も人を傷つけていることに気づけないし、負の連鎖が続くだけだと思うから。
カナ 私の場合は、会話する前から「あの人はこういう人だ」「こういう風に考えるタイプ」って、勝手な思い込みを抱かないことを意識してる。もし、誰かとコミュニケーションをとるときに、そんな思い込みが頭をよぎりそうになったら、すぐその思考をリセット。そうやって自分の思考をうまくコントロールしながらフラットな気持ちで相手と話すと、違いがあっても受けとめられていい関係を築けるんだよね。
CHAIを聴いて、自分をまるごと愛しちゃおう!
バンド
双子のマナ ( Vo.&Key. ) 、カナ ( Vo.&Gt. ) 、ユウキ ( Ba.&Cho. )、ユナ ( Dr.&Cho. )で編成された、4人組の“NEO - ニュー・エキサイト・オンナバンド”。2017年にリリースの1stアルバム『PINK』がチャートを席巻。2020年には、USの老舗レーベルSUB POPと契約し、2021年には、3rdアルバム『WINK』を発売。その勢いは日本国内にとどまらず、ワールドワイドに活躍中! 公式サイト■https://chai-band.com
撮影/花村克彦 取材・文/海渡理恵 企画・編集/高戸映里奈(yoi)