昨年、yoiを立ち上げるにあたり、“体・心・性に向き合う”生き方を体現する存在として、そして“自分を知る”大切さをうたう唯一無二のアイコンとして、yoiが熱烈ラブコールを送ったニュー・エキサイト・オンナバンド、CHAI。そんなyoiの思いに“共鳴する”という言葉で返事が来たことから、CHAIの連載『CHAISM』はスタートしました。
(左から)ユウキ ( Ba.&Cho. )、ユナ ( Dr.&Cho. )、マナ ( Vo.&Key)、 カナ ( Vo.&Gt. )
今日は、yoiのローンチからちょうど1年。これまでたくさんのエンパワメントをくれたこの連載も1周年を迎えます。今回は、そもそもyoiとCHAIがあのときに感じた“共鳴”に原点回帰。今を生きるうえで、一人一人異なる体・心・性を持つ私たちが、共鳴し、連帯することの意味とは? スペシャルなロングインタビューは、4人それぞれの“原点”の話からはじまりました。
——今回はyoi、そして連載『CHAISM』の1周年記念スペシャル回です!
全員 1周年おめでとう〜!
カナ あっという間だね〜。こんなに素敵なメディアにかかわることができて本当にうれしいし、ありがとうって気持ちでいっぱい!
ユナ 本当にその通り。これからもよろしくだよ〜。
幼い頃の記憶を探索して再認識できた「自分って最高に面白い!」(マナ)
——こちらこそありがとうございます! 改めて今回は、yoiがはじまり、CHAIの連載『CHAISM』がスタートした原点に立ち返って、この1年間の皆さんの体・心・性への向き合い方や進化したことについて教えてください。
マナ 原点回帰といえば、まさに最近の私のテーマ。曲作りをしながら「まだ誰も聴いたことない、見たことない面白いものってなんだろう」って四六時中考えているの。そうしているうちに、まわりに惑わされない“まっさらでピュアな自分が好きなもの”ってなんだろうって思いはじめて…。今は、もっと自分について深く探索するために、子ども時代の原体験を思い出す作業をしているところ。例えば、小学校の近くに春になるとつくしがたくさん生える野原があったんだけど、登下校のときにそこで友達とよく歌を歌っていた記憶を鮮明に思い返して、「やっぱり音楽が好き!」っていうピュアな気持ちを抽出したりね。
記憶を遡ることで改めて発見があったのは、私は幼い頃から体の仕組みや性に興味があったってこと。「男の子は立っておしっこができるのに、なんで私はできないんだろう」って考えたり、試しに立って用をたしてみたりしてた! 物心ついた頃から、体・心・性に向き合うyoiのコンセプトに共鳴する素質があったってことだね!(笑)
——原点回帰することが、今の自分をより深く理解することにつながったんですね。
マナ そう、そう。原点に帰ってみて、「やっぱマナって最高に面白いやつじゃん!」って、自分で自分をエンパワメントできた感じがした。皆にも、自分の面白いところ、変なところを見つけてみるのをおすすめしたい!
ヨガ、筋トレ、新月ノート…自分の“弱点”を知的好奇心で克服する(カナ)
カナ 私も最近いちばん興味があるのは、そもそもの自分の体、特に筋肉について。ずっと続けているヨガに加えて、筋トレにもハマりはじめていて。毎回ライブをするたびに筋肉痛と息切れがしんどくて、これは有酸素運動をする必要があるなと思ったのがきっかけ。ライブでの持久力をつけるために、マナと一緒に筋トレに取り組んでいます。
ジムには通っていなくて、竹脇まりなさんのYouTubeを観ながらトレーニングをしたり、身長や体重を入力すると筋トレメニューを作ってくれるアプリなんかも使ってみたら楽しくて! 最初は「やりたくないな〜」と思いながらしぶしぶやっていたんだけど、だんだん筋肉がついてきて、姿勢もよくなって…と目に見えて体の変化を実感したら、面白くなってきました。
——前回のソロインタビューで話してくれたカナさんのヨガの話も、反響が大きかったです! 体への向き合い方も進化しているんですね。
カナ ヨガで解剖学を学んだことが、筋トレでも生かされているんです。自分の体の弱い部分があれば、どこを鍛えればいいのかがわかる。
緊張やストレスがあると睡眠に支障が出てしまうのも、私の弱い部分。だから、イライラしたり焦りが出てきたら、目をつぶってヨガの呼吸をして、心を落ち着かせるようにしています。あと、ノートに思っていることを書き起こして落ち着く方法も。スマホのブルーライトは睡眠を妨げる一因になるし、もともとアナログが好きなので、私は紙に書いています。「新月ノート」といって、新月の日に自分がかなえたい夢を書くといいと聞いたので、実践してみたりしました。
大好きなことを大好きな人たちと続けるために、自分の感情を救い出す(ユナ)
ユナ 私も体を鍛えているところ! 年齢を重ねて体力が落ちているのを感じて。これからも大好きなドラムを楽しくたたきつづけたいから、力を入れて取り組んでいるよ。
今年の2月頃、北米ツアーの頃からEMSを使って鍛えていたんだけど、最近はキックボクシングジムにも通いはじめて、体幹トレーニングを頑張ってる。ハードなレッスンのあとは、体中が激しい筋肉痛に襲われるんだよね〜! でも、体幹が強くなってきた気がするから、最近はむしろ、筋肉痛を求めちゃう自分がいる(笑)。
——全身からドラムをたたく喜びが伝わってくるユナさんのステージパフォーマンスの影には、筋肉痛と戦う努力があったんですね…!
ユナ 筋肉痛とも戦ってるし、最近は自分の感情とも真っ向から向き合うようにしてる。前に『CHAISM』で話した“本当の優しさ”に通ずる話なんだけど、私は一人っ子ってことも影響してか、人とぶつかることがすごく苦手で…。大切な人に対しても、いつもどういう距離感で、どこまで話すべきか深く考え込んでしまって本音を隠しがち。でも、CHAIとして活動をはじめて、メンバーやスタッフとともに楽しいことも、大変なことも一緒に乗り越えていくうちに、自分の気持ちを相手に包み隠さず伝えることが、ヘルシーな人間関係を築く秘訣だと気づいたの。
もし、誰かからの言葉に傷つくことがあったら、「いつもありがとう。でも、あのときの言葉はショックを受けちゃった」と正直に伝える。「相手を傷つけたらどうしよう?」とためらうこともあるけれど、自分の感情をないがしろにしたら、その相手との関係もないがしろにすることになるから。大切な人にほど、心をもっともっと解き放っていきたい!
「好き」と「嫌い」を洗い出したら、毎日がヘルシーな循環に(ユウキ)
ユウキ 今の私は、毎日やる気マックス! 興味のあること、やりたいことがとめどなくあふれてきて、心がハッピーで満たされている最高の状態。でも、ちょっと生き急いじゃっているようなところがあって、体はバキバキ…(笑)。皆みたいにボディメンテナンスが全然できていないから、きちんと自分の体に向き合ってケアすることが、今の私の課題なんだよね。
昨日もアイデアや思考が止まらず、午前3時まで寝つけなくて。“自分のキャパシティを把握して休むことも大事”ってことはわかっているから、皆を見習ってちゃんと運動して睡眠を取るようにしないとな〜。
——時に、アンコントロールな心を解放することも大事かもしれませんね。
ユウキ そうなの! 超多忙だけど、そんな毎日に充足感も感じてる。なんでこんなにやる気が出てきたかというと、自分の「嫌いなこと」を細かく分析して、自分の「好きなこと」を洗い出すことをしたから。そうやって判明した「好き!」を口に出して伝えるようにしたら、実際にそれに関連した仕事のオファーが来たり、新しい友達ができたりといいサイクルが生まれて…。以前は、「好きなことだけでは人生は回っていかない」と思い込んでいたけれど、自分のことをしっかりと研究して知ると、ヘルシーな循環が生まれることに気がつきました。
羽が生えた私たちは無敵! より自由に、自分らしく進化するCHAI
——では、CHAIの活動としての1年を振り返ってみると、今年は北米ツアーにはじまり、立て続けに新曲をリリース、さらには国内外のフェスへの出演など、活躍の幅を猛スピードで広げています。9月〜11月にかけては、単独ツアー、北米&中南米の大型フェスへの出演が決まっていますよね。
マナ 2022年は、早々に北米ツアーを開催できて、私たちの新しい姿を見せられたという安心感でスタートすることができたなって思う。いろんなことを経験して、これまで以上に練習をしようとか、これから先どんな景色が見たいかを意識して日々を過ごすことができるようになって…「羽が生えた!」って感じ! アニメ好きの私が例えるなら、映画『幻のポケモン ルギア爆誕』で、海の神・ルギアが海中から勢いよく登場するシーンみたいなイメージ(笑)。“マナがようやく本物のマナになれた”感じがしている。
カナ 私も、コロナ禍を経てステージに戻ってこられた今年は、オーディエンスの前で歌えることがどれだけ幸せかを痛感する日々だったなと。「私の生きる場所はステージの上なんだ」って再認識できました。
さらに最近は、これまで以上にステージで自分をさらけ出せている気がします。日常生活では表に出さないような、「エロい」とか「汚い」部分まで隠さずにステージでは表現できる。アメリカでのツアーを経て、あらゆるミュージシャンの表現から学べたことの影響が大きかったかも。より音楽にのめり込めている感じがします。
ユナ 私もライブをするたびに、カッコいいメンバーと一緒に音楽を奏でられていること、そして、目の前にキラキラした瞳のお客さんがいる、という状況に改めて感謝を感じる日々を過ごしている。皆からもらったハッピーバイブスを、これから皆に返していきたい!
ユウキ 9月からの海外活動では、『Hippo Campus』のツアーの前座を務めるんだけど、個人的に「好き!」を公言していたアーティストだったからオファーが来たときはすごくうれしかった! 中南米のフェス出演も、緊張がないと言ったらウソになるけど、今からすごくワクワクしている。私たちのカッコよさ、面白さ、ポジティブなエナジーを伝えて、海外のオーディエンスが、「すごいもの観た!」と元気になって帰ってくれたらうれしいな。
“一人じゃない”と気づいた先に、想像を超える景色が待っている
——そして、トークテーマは「共鳴」へ。シスターフッドともいわれる社会における女性の連帯は、まさにCHAIがバンドとして世界にメッセージを発信しているアクションそのものです。今年も『まるごと』や『HERO JOURNEY』など、世の中の当たり前について考え直すきっかけになるような楽曲を多数リリースしたCHAI。音楽、ライブのMC、SNSなどを通して、自分たちのステイトメントを出すときに大切にしていることはありますか。
ユウキ 日本では自分の意見を言わないほうがリスクが回避できたり、そのほうがベターだという雰囲気があるよね。私はそうした風潮に疑問を感じているけど、だからといってなんでもかんでも発言すればいいってわけじゃない。自分が発信したいこと、守りたいことがあったときに、「私はこう思う」とひとつの意見として提示するのが大切だと思ってる。私は、その意見を音楽という手法で伝えることが最高に楽しくて好き!
CHAIとしては、メッセージ性の強い曲がきちんと皆に届くように、同じアルバムの中にメッセージを込めていない曲もいれてバランスを保つことは心がけているんだ。『PING PONG!(feat.YMCK)』は、まさに言葉遊びや語感の面白さを楽しむためだけの曲。まじめなことだけが連帯じゃない。一緒に思いっきり遊ぶことも大事だよね!
ユナ 私はメッセージを発信するときに、「皆でこれをやろう!」と強制はせず、自分が「楽しい!」「いい!」と感じたことを“シェアする”スタンスでいることを大切にしているかな。例えば、私は自然が大好きだから、よくゴミ拾いの活動に参加しているんだけど、それを「皆もやるべき!」とは言わない。あくまでも、私がやってみて楽しかったという感想や気づきをシェアするようにしています。
メッセージって、言葉だけで伝えると説教くさくなってしまうことがあるけど、それを音楽にのせるだけでたくさんの人に届いたり、つながることができるのを身をもって感じていて。それこそ、曲としてもカッコいい『N.E.O.』は、私たちが思う「NEOかわいい」という概念を一気に広めてくれた楽曲だった。言葉だけで私たちの考えを伝えるのは限界があったけれど、音楽がその限界を破ってくれたんだよね。
——マナさんは、ライブでMCを担当することが多いと思いますが、マイクを持って発言するプレッシャーを感じることはありますか。いつもエネルギッシュなMCをされていますよね。
カナ マナの「だってこうなんだもーーーん!」っていう、クレヨンしんちゃんみたいなMCっていいよね! マナが言うから伝わるってことが多い。
マナ プレッシャーを感じることもあるけれど、私はミュージシャンだから、結局は言葉よりも音楽が重要なんだよね。最近、改めてミュージシャンって最高の職業だなって思うことが多くて。自分たちが考えていることを音楽を通して提示できて、しかもそれが世の中を変える大きな力を持ってる。
私自身も、音楽を通して、社会が抱える差別問題に気づいた経験があって。それと同じように自分たちの音楽が、誰かに気づきを与えるかもしれないって考えたらすごいよね!
マナ 日本にもいろんな問題があって、ひとつひとつの問題に対して私がその前線に立って戦うことはできないけれど、自分たちの考えは音楽で伝えていきたい。「こういうオンナの生き方もある! オンナのパワーもある!」ってね。CHAIの4人の生き方を、誰かにロールモデルとして見せていけたら、世の中の「正解」とか「かわいい」に対するとらえ方も変わってくるはず。そのためには、私たち4人が強くいることが重要だし、そんな時代が今、ようやく来たのかも。
——既存の概念やまわりに惑わされず、“強くいる”ためにできることはなんでしょうか。
マナ “一人じゃない”と自覚すること。この連載でもバンド結成経緯は話したことがあるけれど、そもそも私たちは、4人それぞれがコンプレックスに悩んでいた過去があって、一人ではどうにもできないからバンドを組んだ。それこそが「共鳴」「連帯」のはじまりだったんだよね。4人からはじまった連帯が、今では私たちをサポートしてくれる多くの人たちとの連帯になり、1人よりも4人、4人よりも8人…と、同じ夢や目標を見ている人との輪に広がっている。それこそが将来の可能性を広げてくれるし、今以上に一人一人がパワフルになるための力になるって実感している。
ユナ 皆でいたからこそ、いろんなことを乗り越えられたよね。同じステージに立って、同じ景色を見て、深いところで気持ちを理解し合える3人がいて幸せ。家族以外にも、大切な場所って作れるんだと教えてくれたCHAIに感謝してるよ。
ボーダーレスな世界で、「あなたはどんな人?」にどう答えるか
——「共鳴」と「連帯」は次なるアクションへとつながります。CHAIがこれからさらに、今の世の中に対して発信したいことはありますか。
カナ 「誰かの人生の一部になれるような表現」を届けていきたい。その表現は、皆が抱えている思いや感情に寄り添うというより、世の中の3歩先を行くようなものでありたい。「え? CHAI、寄り添わないの? 飛び越えちゃうの?(笑)」と思われるような、予想外な表現をすることで、唯一無二の存在でいたいと思います。
ユウキ 私は、今発信したいことがあるというよりは、今後いろんなことを発信していくための“表現のあり方”を模索しているところかな。
私たちは人種 、セクシャリティ、年齢など、いろんなラベリングをされて生きている。そのなかでもセクシャリティに関しては、いろんな選択肢があって自分で選べるってことが最近になってようやく周知されつつあるよね。そうやって、ラベルの境界があいまいになっていくってすごくいいことだなと思うの。
でも、人種や年齢など、自分では選べないラベルもある。どうしたって私は日本人だし。そのうえで、私はひとりの表現者として、日本人というラベルをアピールしたい気持ちもある一方で、ただの世界の中の一人でありたいとも思うこともあって。ほかにも、性別なんて関係ない存在でいたいけど、ガールズパワーって素晴らしいと思うし、あえて“オンナ”だって言いたい気持ちもある。あらゆることが、ボーダーレスな世界になってほしいけれど、そういったジレンマもあるんだよね。「あなたはどういう人?」と聞かれたときになんと答えるか、自分なりの答えを見つけたいと思ってる。
——ラベルに囚われないということは、「自分は何者かを自分の言葉や表現で伝える」ことですもんね。では、CHAIはこれから、「何者」になっていくのでしょうか?
マナ 目の前の目標はいっぱいあって、まずは武道館でライブをして、たくさんの人にCHAIのことを見てもらいたい。そして、大きな目標は、この連載でも度々話している、グラミー賞の舞台に上がること! グラミーのステージに上がった私たちを見てもらえたら、人種、セクシャリティ、美しさなどのステレオタイプな考え方に風穴を開けられるんじゃないかと思っています。音楽で「私たちはこういう人間だ!」を伝えられるはず!
バンド
双子のマナ ( Vo.&Key. ) 、カナ ( Vo.&Gt. ) 、ユウキ ( Ba.&Cho. )、ユナ ( Dr.&Cho. )で編成された、4人組の“NEO - ニュー・エキサイト・オンナバンド”。2017年にリリースの1stアルバム『PINK』がチャートを席巻。2020年には、USの老舗レーベルSUB POPと契約し、2021年には、3rdアルバム『WINK』を発売。その勢いは日本国内にとどまらず、ワールドワイドに活躍中! 公式サイト■https://chai-band.com
【マナ】カーディガン¥52,800・タンクトップ¥23,100・Tシャツ¥18,700・ミニスカート¥29,700・キーチェーン¥25,300・ソックス¥42,900・サンダル¥47,300/ENKEL(doublet)
【カナ】カーディガン¥63,800・タンクトップ¥23,100・Tシャツ¥20,900・スカート(参考商品)¥88,000・キーチェーン¥25,300・ソックス¥28,600・サンダル¥47,300/ENKEL(doublet)
【ユウキ】ジャージ¥51,700・Tシャツ¥30,800・スカート¥41,800・ソックス¥4,950・サンダル¥52,800/ENKEL(doublet)
【ユナ】パーカー¥50,600・シャツ¥39,600・パンツ¥52,800・ベルト¥53,900・サンダル¥52,800/ENKEL(doublet)
【SHOP LIST】
ENKEL 03-6812-9897
撮影/酒井優衣 ヘア/夛田恵子(mod's hair) メイク/YUKA HIRAC(VOW-VOW) スタイリスト/小林聡一郎 取材・文/海渡理恵 企画・編集/高戸映里奈(yoi)