2024年8月より、多数ご応募いただいた中から読者代表として選ばれた「yoiクリエイターズ」。今回は数々のウェルネススポットを取材してくれた、モデル・ピラティスインストラクターの石坂友里さんの最終回です。
【yoiクリエイターズとは?】
yoiの読者としての目線を生かし、語学やアート、文章表現などのクリエイティブスキルを発揮して、情報を発信していくクリエイターのこと。ビューティーやウェルネス、カルチャーや社会派の記事など、それぞれの得意分野でyoi読者におすすめのコンテンツを毎月配信します。メンバーは25年8月現在石坂友里さん、くどうあやさん、高橋琴美さん。

2024年12月からモデルの仕事と並行してピラティスインストラクターとしても活動している私が、インストラクターとして働くことになった経緯、ピラティスに対して感じていた疑問、そしてレッスンを通じて“自分らしさ”に気づいていくまでの体験を、ひとつのレポートとして綴っていきます。
現在ピラティスを習っている方や、これから始めようとしている方、そして“自分らしさって何だろう”と感じている方にとって、少しでも参考になることがあればうれしいです。
ピラティスを始めたきっかけ
モデルの仕事を長年続けてきた私は、自分の体のメンテナンスのために、さまざまなトレーニングを試してきました。ピラティスはもちろん、ジムやヨガ、水泳、ボクササイズ。パーソナルジムにも何カ所も通いました。O脚が治ると聞けば、フルマラソンにまで挑戦してしまうほど(笑)。それでも、理想の自分には何かが足りない——そんな悩みがいつも心のどこかにありました。

ピラティスを始める前! 体型も姿勢も年齢のせいにしてしまっていたときの写真。
そんな折に、コロナウイルスが大流行。30歳を超え、仕事の方向性にも迷いが出てきた大事な時期でしたが、続くステイホームで運動不足になり、執筆や翻訳作業による長時間のパソコン作業で体は歪み、目に見えてわかるほど体重も増加。「ああ、こうして人は歳をとっていくんだな」と勝手に納得して自分をあきらめてしまっていました。
そんなある日取材で訪れた整体で、「何言ってるんですか!あきらめるなんてもったいないですよ!」と先生に言われ、「確かにそうかも知れない...せっかく私として生まれたのに!」とハッと目が覚めたのです。
そんな時に頭をよぎったのが、以前挑戦しかけて辞めてしまったピラティスでした。世界中のセレブたちが口をそろえて「ピラティスはいい!」と絶賛しているのには、きっと何かの理由があるはず。その“何か”に、自分の可能性をかけてみたいと思ったのです。

ピラティスの練習で体はだんだん引き締まり、コロナ禍前の体型に戻ってきたような感覚!
深くピラティスについて知りたいという思いから、さっそくピラティスインストラクターの養成講座を受講。集中的に取り組んだことで体は引き締まり、運動することで心も前向きに! ワクワクする心を取り戻していきました。
“幸せは心次第!”——そう思っていた私は「ピラティスをして前向きになれたこの気持ちを伝えたい!」と考え、モデルとしての経験や、これまでのさまざまなトレーニングの知識も生かして、ピラティスを教える道を選んだのです。
しかし、同時にある違和感を抱くようになりました。「確かにピラティスはいい気がする! でも、これって今まで試してきた運動と、何が違うんだろう...?」もしかしたらこのまま続けていても、“何か物足りない自分”からは抜け出せない——。“ピラティスの本質が知りたい”という葛藤の始まりでした。
ピラティスの本質を求めて
そんな時ふと目に留まったのが、ピラティスの創始者ジョセフ・H・ピラティス氏のスタジオで勤務された経験を持ち、現在『freedomofpilates』ディレクターも務めるIto Yoshinori先生のInstagramでした。
プロフィールには「『本当に自分を大切にする』ピラティスの本質で世界を幸せに」とあり、投稿動画には、しなやかに体を動かす先生の姿とともに「ピラティス=あなたの素晴らしさに気づくこと」といった、思わず引き込まれるような言葉が綴られていました。私は、その投稿に心を動かされ、Yoshinori先生のパーソナルトレーニングを受けてみることにしたのです。
当時の私の体は油断するとすぐに締まりがなくなり、さらに柔軟性がなくストレッチが気持ちいいとすら感じられない状態。そして、「インストラクターの仕事もしているのに、実はピラティスが楽しくなくなってしまった」——そんな正直すぎる悩みまで打ち明けてしまいました。
すると先生は、笑いながら「任せてください」とひと言。少し緊張しつつも、60分のパーソナルトレーニングが始まりました。

まさか記事に公開するなんて思っていなかった、レッスン前の写真(笑)。自分への自信のなさまですべてが体に出てしまっています。
レッスンは、まず「呼吸」からスタート。呼吸に合わせて先生は、私の骨盤まわりを今まで動かしたことのない方向へと導こうとしますが、無意識のうちに体がガチガチにホールドし、自らブレーキをかけてしまいました。
そんな私に先生は、「ユリさんは、グッと我慢してしまうところがあるんですね。たぶん、“こうでなきゃ”という考えが強いのかもしれません。そして、“力でなんとかしよう”としてしまうところもありますね」と、体の反応を通して、自分自身でも気づいていなかった心の在り方を見抜きます。
さらに「できないことを信じてしまっている」と先生に断言されたのは、まさにそのとおり。長年蓄積された「体が硬い」という固定観念が邪魔をし、先生が導こうとしても体が固まってしまうのです。でも先生はそんな私に合わせて工夫し、丁寧に導いてくれました。
「ほら、できるじゃん!」の先生のひと言に、私は「自分にはできないと思い込んでいる自分」にすら気づいていなかったことを知ったのでした。思い込みが、自分自身を苦しめていたなんて...!
それはピラティスに限らず、日常生活にも通じること。自分が「できない」と思い込んでいたことは、本当はできるのかもしれない。そして、自分の心や体が求めていることを固定観念であきめてしまうなんて、なんてもったいないんだろうと感じました。
この経験で、ピラティスを通じて自分らしさを発見するという意味が、少しだけわかった気がしました。

60分のレッスン後。お腹が引き上がり、胸も開いています。そして目もパッと開いた印象。
60分のレッスンで、心と体の変化は、感覚や見た目となって現れました。先生のレッスンでは、エクササイズをひとつ行うたびに、「いつもと体が違う」という感覚を感じることができたのです。
お腹が引き上がる感覚、背筋がスッと通る感覚、そして足の裏がしっかり地面を踏んでいる感覚。そして何より、終わったあとは本当に体が心地いい! 先生曰く、これが自然な状態に戻った、本来の自分の姿なのだそう! 鏡を見た私は「あれ?私、まだまだいけるじゃん!」そんなことを密かに思ってしまうほど(笑)。

そしてさらに1カ月後。体の使い方を変えただけで、ここまで体が変化してくれました!
「“体か心”かではなく、“体も心も”である」

ジョセフ・H・ピラティス著『コントロロジー ピラティスメソッドの原点』
Yoshinori先生のレッスンを受け、体でピラティスの楽しさを体験した私は、「結局ピラティスって何なのだろう?」という疑問に行きつきます。
そんなピラティスの原点を知りたくて読んだ本、ジョセフ・H・ピラティス著『コントロロジー ピラティスメソッドの原点』には、ピラティスは単なるエクササイズのメソッドではないこと、さらに健康とは「心と体の理想的なバランスを実現してはじめて、本当の健康がどのようなものかわかる」ということが書かれていました。
ピラティスによって健やかな体を手に入れることで、仕事を精力的にこなすだけでなく、仕事以外の時間を趣味に使ったり、心からリラックスできる精神的なゆとりも生まれます。そして、これまで生きてきた環境の中で、何が心と体のバランスを乱していたのか原因を発見しながら体・頭・精神の調和を取り戻していく――それこそが、ピラティスの目的だというのです。
Yoshinori先生の、「ピラティスを始める目的は『ケガを治したい』『ダイエットしたい』など、人それぞれ違うと思います。ですが、実はその目的を深くたどっていくと、ケガが治り自由に体が動くようになった開放感、ダイエットして自分を好きになれたことへの喜びなど――本当に求めているのは、そうした前向きな感情なのではないか」という言葉が頭をよぎります。
そこで気がついたのは、私が自分に対して“何をしても物足りない”と感じていたのは、理想の自分を目指してがむしゃらに頑張るあまり、心を置き去りにしてしまっていたからかもしれないということでした。
ピラティスにかけてみようと思い、探し続けていた“何か”は、もしかするとピラティスの原点そのものに通じるものだったのかもしれない――そんなふうに感じたのでした。
自然に従い、心と体のバランスを探す旅

ピラティスを行ううえで大切なのは、呼吸と背骨を意識しながら、体全体――つまりホールボディで動くこと。動物のようなしなやかな体を目指して、これまで使ったことのない動きにもチャレンジしながら、今は改めて基礎を丁寧に身につけているところです。「海外のインストラクターたちは、ピラティスを自分の体で感じながら、もっと自由でクリエイティブに取り組んでいるんですよ」。そんな先生の言葉に背中を押されながら自分の体と向き合っています。
地味な動きになると「ああ、こういう地道な作業をつい面倒に感じてしまうんだな」などと、自分の性格に気づかされることもあります。でも今は、そんな自分と丁寧に向き合うことも大切にしています。それが達成できたときはすごくうれしいし、自信にもつながっています◎。
そして、自分が頑張りすぎていたことに気づき、思いきって2週間の夏休みを取ることにしました! 「体力さえあれば何とでもなる!」と、心がボロボロになっても突き進んでいた私が、自分を大切にする選択を、ようやくすることができたのだと思います。
そんな心境の変化を経て、気持ちもスッキリし、仕事でも少しずつ自分らしさを出せるようになったところ、「何年も悩んでいた手術後の違和感が取れて、すごくうれしいです」「ユリさんのレッスンで、ピラティスがわかってきて楽しいです」という声が届くようになり、やっとインストラクターとしての喜びも実感できるようになりました。

左:Before 右:After
呼吸と伸びを意識した、自宅でできる簡単なエクササイズだけでも、体の芯からスッと伸び、ウエストラインやお尻が引き締まり、気になってる前太ももの張りも、少し緩和した感覚があじわえました! ピラティスを、毎日心と体がスッキリする気持ちのいい習慣にできたら◎。
これまで周りに流されながら“何かが違う”と思いながらも仕事を続けてしまった自分が、ピラティスを通して自分らしさって何だろう?という問いを持てたことは、自分の人生においても、とても大きな一歩でした。
私にとっての“自分らしさ”とは、自分の心に素直に従うこと。自分が“いい”と思ったものを、信じてあげること。そして自分の性質を理解して、本来の自分を認めてあげること!
この気づきは、きっと今、私と同じように仕事で悩んでいる方、人間関係や勉強に悩んでいる方にも通じるものがあると思います。だからこそ、この経験が誰かにとっての小さなヒントや気づきになれたらうれしいです。
ピラティスを通して、本来の自分の姿を取り戻し、その人らしく自由に生きていける――私もインストラクターとして、そんなきっかけを届けられる存在になれたら、とても素敵だなと思っています。
撮影・構成・文/石坂友里