月経が来るのがバラバラ、月経周期の間隔が長い、月経がすぐに来てしまうなど、いつ来るかわからない月経を不安に思っている女性たちがたくさんいます。月経不順にならないために気をつけるべきことや、生活の中で改善できることなど、月経不順への対処法を産婦人科医の池田裕美枝先生に伺いました。

池田裕美枝先生のイラストによる、連載第28回の扉

月経不順の不安はどうしたら解決できる?

増田:月経周期の間隔が長い、逆に周期が短い、月経が長く続くなど、月経不順にはさまざまな状態と原因があります【月経不順の種類:ドクタートークVol.27を参照】。このような、月経がいつ来るかわからない不安を解決するにはどうしたらいいでしょうか? 何か方法はありますか?

池田先生月経不順や無月経の原因で、妊娠や腫瘍などの影響ではないことが確認できて、排卵障害(=きちんと排卵できていない)が原因だな、となったときには、その理由が何かを知ることが大事です。

多いのは、急激なダイエットやストレスによって、卵巣がお休みしてしまっている状態です。そのほか、「甲状腺機能異常」や「多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群」という体質によるものもあります。

ですので、月経不順が続くときには、まず婦人科を受診して、検査で原因を見つけましょう。検査は、内診やエコー検査、採血検査で行います。月経不順がなぜ起こっているのか、その原因に合った対処法をすることが大事です。いちばん大切なのは、その月経不順の背後に、がんや、ほかのすぐ治療しないといけない病気が隠れていないか調べることです。 

過度なダイエットやストレスで月経不順になるのはなぜ?

増田:体重減少やストレスがあると、排卵障害による月経不順になってしまうのは、どうしてなのでしょうか?

池田先生:急な体重減少や大きなケガなどのストレスがあると、私たちが意識するしないにかかわらず、脳が「今妊娠しては危ない」と判断して、卵巣を働かせるホルモンの流れを上流でストップさせてしまいます。そこまで大きなストレスではなくても、仕事や部活、人間関係など、毎日のストレスが積み重なると、脳はストレスと判断して卵巣の働きを止め、月経不順になることがあります。


【女性ホルモン分泌のしくみ】

女性ホルモン分泌の仕組み

増田:ストレスや疲れがたまったなぁと思ったときに、月経不順にならないようにする方法はありますか?

池田先生:ストレスや疲れは、ぜひ、ためないようにしましょう! これをすればストレス解消になる、というような好きなことの引き出しをいくつか準備しておけるといいと思います。

例えば、ヨガや太極拳、アロマテラピー、瞑想なども、ストレスケアや自律神経のコントロールによい影響を与える方法のひとつです。自分に合った習慣を日常的に取り入れて、普段からストレスケアを心がけましょう。また、十分な睡眠や休息時間を確保することも大切です。

でもやっぱり、人によっては、ストレスが月経不順として表れやすい人と、そうでない人はいますよね。月経不順があったら、「ああ、もしかしたら私の体にとっては、今の生活、ちょっとストレスフルなのかも」と振り返ってみるのも大切なのではと思います。

リモート取材中の池田先生(右)と増田さん

にこやかに取材にご対応くださった池田先生(右)と、連載を執筆している増田美加さん。

基礎体温をつけてみることも大事

増田月経がバラバラで不安に思っている人は特に、月経周期がどのような状態か、自分で記録をつけておくことも大事ですよね。

池田先生:はい、まずは基礎体温表をつけてみることをおすすめします。実は、その人が排卵しているのかどうかは、正確なところは基礎体温をつけないとわからないこともあるんです 。今は、基礎体温を測定するとアプリと連動してグラフ化してくれる基礎体温計もありますので、ご自身を知るために、2カ月程度つけてみてはどうでしょうか。

なかなか解読が難しいものではありますが、婦人科受診のときに医師にお見せになると、きっと喜んで一緒に見てもらえますよ。自分が毎回排卵しているのか、時々しか排卵していないのか、ぜひ自分の体をよりよく知る一助にしてください。

月経がばらばらで不安な人は基礎体温をつけてみて

月経不順と月経痛がダブルである人は?

増田:月経不順に加えて、月経痛がある人も少なくありません。

「月経が安定しません。順調と思っていたら、突然来なくなったり。月経が来たら来たで、月経痛と肌荒れに悩まされます。生理に振り回される生活で、生理との向き合い方がわからないです」
「基礎体温表をつけていますが、無排卵月経かなと思うときがあります。そのときは、月経痛はなく、逆にきちんと排卵日があるときは、月経痛があり、しんどいです」

アンケート*ではこのような声がありますが、月経不順と月経痛が併せてあるときは、どうしたらいいでしょうか?
*2021年2月に集英社女性誌10誌が読者約1万4,000人を対象に実施したアンケート調査

池田先生:月経痛があって日常生活がつらいなと感じる方は、ぜひ婦人科を受診してください。低用量ピルで痛みを軽減することが可能です。経血量も減ってかなり月経が楽になります。そして何より、月経周期が規則正しくなります。月経不順の悩みはだいぶ解消されます。

これからの時代、月経は、振り回されるものではなく、コントロールするものです。現代を生きる私たち女性の味方として、低用量ピルなどのホルモンのお薬を上手に使ってほしいですね。最初に試してみて、もしピルが合わなくてもあきらめないでください。低用量ピルの種類も複数あり、全部合わないという人はほとんどいません。婦人科には、ピル以外にも月経を減らしたり整えたりする方法がいろいろあります。

なかには、低用量ピルを飲んでも月経痛が残る人もいますが、ピルを利用していれば月経が始まる日はほぼ正確にわかりますので、痛くなる前に鎮痛薬を飲んでおけば、痛みに悩まされることはほぼなくなると思います。

増田低用量ピルを上手に利用すれば、月経不順でいつ月経が来るかわからない不安もなくなりますね。低用量ピルはつらい月経痛の月経困難症の治療薬でもあるので、どちらの症状においても婦人科を受診して相談するメリットは大きいですね!
次回は、月経不順の背後に隠れた病気の治療法について、池田先生に引き続き取材します。

池田裕美枝(いけだ ゆみえ)先生

京都大学医学部附属病院産科婦人科 産婦人科医

池田裕美枝(いけだ ゆみえ)先生

京都大学医学部卒業。市立舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在、京都大学医学部附属病院の女性ヘルスケア外来ほかを担当しつつ、同大学大学院博士課程にて、女性の社会的孤立や月経前症候群による社会的インパクトなどを研究。日本産科婦人科学会専門医、日本プライマリケア連合学会認定医ほか。NPO法人女性医療ネットワーク副理事長。京都大学リプロダクティブヘルス&ライツライトユニット代表。ソーシャルワークプラットフォームKYOTO SCOPE事務局代表。一児の母。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

取材・文/増田美加 イラスト/itabamoe 企画・編集/浅香淳子(yoi)

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