経血量(生理の出血量)が多くて、「昼間でも夜用ナプキンを使っている」「夜用でも漏れてしまって困る」という声が、読者の女性たちからたくさん寄せられています。経血量がどのくらい多いと病気なのかも心配です。月経のときの経血量が通常より多い場合を「過多月経」といいます。過多月経かどうかの見分け方、過多月経の背後には、どんな病気が隠れているのかを、産婦人科医の中込彰子先生に取材しました。過多月経について、3回連続でお話を伺います。

中込彰子先生のイラストによる、連載第15回の扉

生理の出血量、どのくらいだと異常なの?

増田:2021年2月に1万人以上が回答してくださった集英社女性誌の読者アンケートでは、「経血漏れが心配で熟睡できない」「洋服が染みになっていないか、気になって外出がおっくうになる」「ナプキンを頻繁に変えないと漏れるので、トイレに行くタイミングが気になって仕事に集中できない」などなど、経血量の多さに困っている女性たちの声が多くて驚きました。

中込先生:私も10代20代の頃、経血量が多かったのですが、当時は自分の生理が重いとはまったく思っていませんでした。昼間に夜用ナプキンを使っても漏れることがあったのに、月経はそんなものだと思っていたんです。

大学生のときも、月経のときには「漏れて白衣に染みていないかな」といつも気になってストレスでした。また、「漏れないナプキンはないのかしら?」「どうナプキンを使ったら漏れないのかしら?」と、漏れるのはナプキンのせいだと思っていたんです。医療知識をかじっていたはずの私でもこんな感じでしたから、皆さんがモヤモヤして悩む気持ち、とてもよくわかります。

増田:中込先生も、経血量の多さに悩んでいたのですね。とても親近感がわきます! 経血量は、どのくらいの量だと異常なんでしょうか?

中込先生正常な経血量の目安は、1回の月経周期での総経血量が20~140mlといわれています。経血量が多い「過多月経」は、1回の月経周期で140ml以上出血する場合とされています。でも、自分で経血量を毎回測る方はいないですよね。経血量を測らずに、過多月経かどうか、自覚症状からチェックできるポイントがありますのでご紹介しますね。

過多月経のセルフチェックポイント3つ

中込先生:これらにひとつでも当てはまったら、過多月経といえます。経血量が多くて気になると思ったら、ぜひ婦人科にご相談ください。過多月経の背後には原因となる病気が隠れている場合があります。そして、その病気によっては、今後の妊娠などにもかかわってくる可能性もあるんです。ちなみに、私の過多月経にも、背後に原因となる病気があったんですよ。

過多月経の原因にはどんな病気があるの?

中込彰子先生

山梨大学医学部の産婦人科で診療にあたる中込彰子先生。やわらかな笑顔が印象的です!

増田:中込先生の過多月経にも隠れた病気が…!

中込先生:私の場合は子宮内膜症と子宮腺筋症が原因でした。低用量ピルで1年ほどかけて治療して、症状は改善していきました。

増田:過多月経の原因となる病気は、子宮内膜症と子宮腺筋症が多いのですか?

中込先生:過多月経には、さまざまな原因があります。婦人科系の病気としては、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどが考えられますし、そのほかでは、血を固める作用のある血小板が少なくなる病気が隠れていて出血が止まりにくい場合もあります。10代20代の若い方ですと、ホルモン分泌がまだ確立していないことによって起こる「無排卵性機能性出血」が原因の場合が多いですね。

もちろん、頻度は少ないですが、若くても子宮頸がんや子宮体がんなど悪性の病気が隠れていることもありますから注意が必要です。過多月経で、性交渉歴のある方、肥満と診断されたことがある方は、一度は婦人科を受診いただいて相談されることをおすすめします。それから、特に注意してほしいのは、過多月経の人は気づかないうちに貧血になっている場合があることです。

過多月経にはさまざまな原因があります

婦人科を受診すべき「目安」は?

増田:過多月経のために貧血になっているのに、気づかずそのままにしているケースが多いんですね。10代20代の人は婦人科に行くのはなかなかハードルが高いと思うのですが、どのくらいの過多月経なら受診したほうがいいのでしょうか?

中込先生経血量にかかわらず、「月経のことが気になる、生理のために生活に支障がある」というときや、「私の月経は正常かな? 異常かな?」と不安になったら、ぜひ一度、婦人科を受診していただきたいです。先ほども言いましたとおり、過多月経はホルモンバランスの変化だけでなく、治療が必要な病気が原因になっていることがあります。でも何が原因なのかは、受診いただいて診察や検査をしてみないとわからないんです。

性交渉前の方にとっては内診台は抵抗があると思いますので、診察室のベッド上で膝を立てていただき、そこにタオルをかけ、診察することもできます。また、腟からのエコー(超音波)が難しいときは、お尻からのエコーやお腹の上からのエコーで検査することも可能です。

今は患者さんが医師を選ぶ時代です。よくわからない、納得できないと思うことは、素直に担当医師に伝えてみてください。もし、どうしても先生と合わないなぁと感じたら、別の先生を探してみましょう。皆さんが安心して通い、信頼して相談できる先生が必ずいるはずですよ。

増田:中込先生、ありがとうございます。経血量が多いのをそのままにしないほうがよいこと、よくわかりました。次回は、過多月経のケア方法や治療についてお聞きします。

中込彰子(なかごみ あきこ)先生

山梨大学医学部 産婦人科医

中込彰子(なかごみ あきこ)先生

愛媛生まれ、広島育ち。日本産科婦人科学会専門医。NPO法人女性医療ネットワーク理事。琉球大学医学部医学科卒業後、地域に根ざした女性総合診療医を目指し、市立大村市民病院(長崎)で研修。日々の診療のなかで、目指す医師像は「家庭医」ではないかと考え、Oregon Health & Science Universityに短期留学。そこでの経験を経て、総合診療医から産婦人科医への転科を決意。2014年より、東京で産婦人科医として7年間勤務後、現職。『内診台がなくてもできる女性診療 外来診療からのエンパワメント』『Rp.+(レシピプラス)ホルモンとくすり』共同執筆。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

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取材・文/増田美加 イラスト/itabamoe 撮影/島袋智子 Photo by LightFieldStudios, Firn / iStock / Getty Images Plus 企画・編集/浅香淳子(yoi)