健康診断で貧血と言われたことはありませんか? 経血量が多い過多月経の人は、貧血になるリスクが高いといわれています。動悸、息切れ、疲れやすいなどの症状があれば、貧血かもしれません。また、自覚症状がなくても貧血になっている可能性もあるといいます。過多月経と貧血について、中込彰子先生に伺いました。
経血量が多いと、貧血になるリスクが高い!?
増田:経血量が多い「過多月経」の人は、貧血の可能性が高いといわれています。読者の皆さんからも、「経血量が多いときは具合が悪い」「クラクラする」「すぐ疲れる」などの声がありました。このような症状があれば、貧血を疑ったほうがいいでしょうか?
中込先生:はい、過多月経があって(⇒Vol.15 【過多月経チェックポイント】を参照)次のような症状があれば、貧血の可能性があります。
貧血を治療しなければいけない理由とは
増田:過多月経は、貧血になるリスクが高いのですね。過多月経ではないのに健診で貧血と言われることもありますか?
中込先生:そうですね、経血量は多くない、普通だと自分では思っていても、実は多いという人もいます。また、貧血が少しずつ進んでいった場合、貧血の症状に気づきにくくなります。
女性の貧血は、過多月経によるものが約6割、胃潰瘍など消化器からの出血による貧血が約2割といわれています。腎臓の病気でも貧血になることがあります。ですから、経血量が多くない人が貧血の場合は、消化器系や腎臓、血液の病気などで貧血となっている可能性があります。
増田:貧血があっても症状がそれほどつらくないと、治療していない人もいますね。
中込先生:貧血は、放置せずにぜひ原因を突きとめ治療をしていただきたいです。というのも、貧血を放置しておくと、さまざまな恐ろしい状態が引き起こされる可能性があるからです。
診療と家事育児の両立で日々多忙ななか、リモートで取材に応じてくださった中込先生。
中込先生:そもそも貧血とは、血液が酸素を運ぶ能力の低下、つまり「低酸素状態」を表しています。そうなると心臓はより多くの血液を体中に送ろうとして、心拍数が常に増えた状態になるので動悸がしてきます。その状態が長く続くと心臓がオーバーワークになり、さらには脳にも負担をかけ、心筋梗塞や記憶力・認知力の低下など、深刻な状態を引き起こすことになりえるのです。ひとつ間違うと、命の危険もあります。
ちなみに、貧血はヘモグロビンの値で診断され、検査機器によって多少の差はありますが、成人女性で約12g/dL未満、成人男性で約13g/dL未満が基準とされています。
貧血と診断されたら何科に行けばいい?
増田:まずは、過多月経があるなら婦人科を受診してその原因を調べるとともに、貧血がないかどうかを確かめることが大切ですね。
中込先生:はい、ぜひそうしてください。婦人科で過多月経の治療をすれば、貧血があっても徐々に改善されていきます。貧血がひどい場合は、その場で治療を開始することもあります。
貧血の治療は、原因にもよりますが、おもに鉄剤です。鉄剤には、錠剤のほか、シロップ剤もあります。気持ちが悪くなって鉄剤を飲めないという人には、注射もあります。
中込先生:過多月経ではないけれど貧血があるという人は、消化器などからの出血を疑って、まず内科を受診し、原因を検査してもらい治療しましょう。貧血の原因はさまざまです。程度にもよりますが、貧血を指摘されたら、一度は必ず病院を受診してしっかり調べていただきたいと思います。
増田:たかが貧血と思うのは大間違いですね。過多月経があれば、我慢せず婦人科を受診して検査してもらうこと。過多月経がなくても、健康診断で貧血を指摘されたら、必ず医療機関を受診して検査してもらい、治療が必要ならしっかり行うこと、覚えておきたいと思います。
中込先生、過多月経と貧血のこと、3回にわたってお話しいただきありがとうございました!
山梨大学医学部 産婦人科医
愛媛生まれ、広島育ち。日本産科婦人科学会専門医。NPO法人女性医療ネットワーク理事。琉球大学医学部医学科卒業後、地域に根ざした女性総合診療医を目指し、市立大村市民病院(長崎)で研修。日々の診療の中で、目指す医師像は「家庭医」ではないかと考え、Oregon Health & Science Universityに短期留学。そこでの経験を経て、総合診療医から産婦人科医への転科を決意。2014年より、東京で産婦人科医として7年間勤務後、現職。『内診台がなくてもできる女性診療 外来診療からのエンパワメント』『Rp.+(レシピプラス)ホルモンとくすり』共同執筆。
取材・文/増田美加 イラスト/itabamoe 撮影/島袋智子 Photo by Nattakorn Maneerat, EM / iStock / Getty Images Plus 企画・編集/浅香淳子(yoi)