自分をケアするためには、自分の体をよく知ることが必要です。また、他者とコミュニケーションを取る上でも、自分とは違う体について正しい知識をもっておくことが欠かせません。yoiに寄せられた体についての素朴な疑問や不安に、吉本レディースクリニック院長・吉本裕子先生、プライベートケアクリニック東京・東京院の院長である小堀善友先生が回答。数々の質問の中で特に読まれた人気記事をご紹介します!
吉本レディースクリニック院長
産婦人科医。日本専門医機構認定専門医。高知医大(現・高知大学医学部)卒業。金沢大学付属病院、富山市民病院を経て現職。NPO法人女性医療ネットワーク理事、富山市医師会理事、性暴力被害ワンストップ支援センター富山協力医師、女性被害者支援ネットワーク医師、富山大学人間発達科学部附属中学校評議員。吉本レディースクリニックは、病気治療だけでなく、女性の人生に寄り添い、心身の拠り所となるクリニックとして定評がある。『Rp.+(レシピプラス)VOL.21 NO.1 2022冬「ホルモンとくすり」』(南山堂)共同執筆。
プライベートケアクリニック東京・東京院 院長
日本泌尿器科学会専門医、日本性感染症学会認定医、日本性機能学会専門医、日本性科学会セックスセラピストなど多数の資格を保有。金沢大学医学部を卒業後、獨協医科大学越谷病院(現・ 獨協医科大学埼玉医療センター)の泌尿器科に勤務したのち、アメリカ・イリノイ大学に招請研究員として留学。2021年より、プライベートケアクリニック東京 東京院の院長を務める。主に男性性機能障害、男性不妊症、性感染症を専門にしており、ホームページのブログやSNSではメンズヘルスについての情報発信にも取り組む。著書に『泌尿器科医が教えるオトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)、『妊活カップルのためのオトコ学』(メディカルトリビューン)、『泌尿器科医が教える「正しいマスターベーション」』(インプレス)などがある
- Q:腟への挿入が気持ちよくないと感じるのはおかしいでしょうか?
- Q:腟がきつすぎてペニスが入らないことがあります。なにか原因はあるのでしょうか?
- Q.前立腺マッサージをしすぎると勃起しなくなるって本当?
- Q:パートナーに腟がゆるいと言われます…。きつくすることはできますか?
- Q.勃起するとペニスが途中で曲がってしまうのは問題ないですか?
- Q:セックスのとき、濡れにくく、乾きやすいのが悩みです。対策はありますか?
- Q.射精した後、猛烈に眠くなるのはなぜ?
- Q:激しいセックスや回数が多すぎると、腟が傷むことはありますか?
- Q:性交痛があるのですが、原因と対策を教えてください。
- Q.ペニスの勃起力をアップするにはどうすればいいですか?
- Q:セックスで潮を吹きやすくなってしまったのですが、出産となにか関係はありますか?
- Q.射精後にやってくる「賢者タイム」の正体は?
- Q:知っておくべき、性感染症のサインを教えてください。
- Q.お酒を飲むと中折れしてしまいます。これって年齢のせいですか?
- Q.射精後もセックスを継続したいが、ペニスが擦れるような痛みがあり断念。原因と対策は?
- Q.セックスの最中にペニスが傷ついて出血。どうケアするのが正解?
- Q.コンドームをつけるとペニスが痛くなり、気分が落ち込んで小さくなってしまいます
- Q.妊活を始めてから、「排卵日だから」とセックスしようとすると、勃たなくなってしまいました。原因と対策を知りたいです
- Q.早漏に効く薬はありますか?
- Q.セックスは腟トレになりますか?
- Q.セックス後、おりものに血が混ざることがあります。大丈夫でしょうか?
Q:腟への挿入が気持ちよくないと感じるのはおかしいでしょうか?
A:おかしくありません。挿入以外で快感を得やすいだけかも
吉本先生:腟への挿入が気持ちよくないというより、挿入以外の行為のほうが快感を得やすいのかもしれません。挿入だけにこだわらず、パートナーと話し合って別の方法を模索するよう考え方をシフトしてもいいと思いますよ。避けてほしいのは、本当は痛いのに気持ちいいフリをしたり、パートナーの要求がつらいのに我慢してしまうこと!
どうしても挿入にこだわるなら、腟内のどこかに気持ちいいと感じるスポットがないか、一緒に探り合うのもひとつの手段。それ自体にも抵抗があるならば、どういった行為で快感を感じるかコミュニケーションを取ってみましょう。触れ合っているだけで十分なのか、射精が目的なのか…。お互いに理解し合うことが気持ちよさにもつながります。
Q:腟がきつすぎてペニスが入らないことがあります。なにか原因はあるのでしょうか?
A:体の構造的な問題や前戯不足が原因かも
吉本先生:腟口が狭い人は出産時もなかなか腟が広がらなくて大変です。体の構造が原因だと腟口を広げるのは少々難しいのですが、腟内は粘膜で柔らかいため、努力次第で入りやすくできると思います。
セックスの際は時間をかけて前戯を行い、腟口を指でじっくり優しく広げて、女性側が気持ちよくなるようにパートナーのサポートが重要です。自分で日頃からゆるみやすくしたいならば、セルフプレジャーやお風呂場で優しくマッサージするのも効果的。あとは「入らなかったらどうしよう」など心理的に緊張していると体もガチガチにこわばって腟がゆるみにくくなるため、なるべくリラックスしながらパートナーとコミュニケーションを取りましょう。
Q.前立腺マッサージをしすぎると勃起しなくなるって本当?
A.勃起しなくなるのは他に原因がある!
小堀先生:医療行為における前立腺マッサージは、かなり前に泌尿器科で前立腺炎の患者さんに対して行っていたことがあります。肛門から直腸に指を入れ、前立腺を圧迫するように指を上下に動かすことで一時的に症状が緩和する効果が見込まれていましたが、今はもうほとんどのクリニックで行われていません。
ただ、慢性前立腺炎の症状として頻尿、残尿感、会陰部の鈍痛のほか、稀に射精時の違和感や勃起障害を伴うことならあります。しかし前立腺マッサージのしすぎによるものとは医学的な因果関係はないと思われるため、もしEDの症状が出た場合は医療機関にかかり、適切な治療を行うのがベスト。
Q:パートナーに腟がゆるいと言われます…。きつくすることはできますか?
A:骨盤底筋を鍛えれば改善されます
吉本先生:腟のゆるみは、骨盤底筋のトレーニングを行えばキュッと締まりをよくすることができます。しかし、「腟がゆるい」というのは男性側の一方的な意見であるとも考えられます。なぜなら女性にとってセックスは、腟が多少ゆるいほうが気持ちよさを感じやすいから。腟がきつく締まっているほうがいいという俗説は、男性側の主観がもたらしたものです。
Q.勃起するとペニスが途中で曲がってしまうのは問題ないですか?
A.セックスに支障がなければ問題ありません
小堀先生:勃起時にペニスが根元から左右どちらかに傾いていたり、中間からグイッと反るように曲がっていたり……これらは性器の形と同様、勃起したペニスの状態にも個人差あります。曲がる原因に医学的根拠があるわけではないのですが、勃起時に膨張する陰茎海綿体のバランスに左右差があることによって起こるのかもしれませんね。基本的には気にする必要はなく、セックスの際に痛みや挿入が困難であるなどの支障がなければ問題ありませんよ。
Q:セックスのとき、濡れにくく、乾きやすいのが悩みです。対策はありますか?
A:興奮状態を保ちつつ、アイテムを上手に活用してみるとよいかも
吉本先生:濡れにくさにも、乾きやすさにも個人差があります。それを踏まえたうえで、滑りをよくする潤滑ローションや腟に注入するタイプのローションで代用してみるのはいかがでしょうか。
興奮が冷めると乾いてくる人もいるので、パートナー側の前戯にも工夫が必要かもしれません。女性側の気持ちが盛り上がっているうちに挿入するなど、相手の状態に合わせて動くのが大切。ほかにも、体が冷えると乾くのが早いとも言われているので、一緒に入浴して体をしっかり温めたり、足もとに布団をかけて冷えないようにすることで対策できるはず!
Q.射精した後、猛烈に眠くなるのはなぜ?
A.賢者タイム=消退期の反応の一種かも
小堀先生:プロラクチンの働きによって眠気を誘っている可能性が高いです。一説ではマスターベーションとセックスではプロラクチンの分泌量が変わるともいわれ、セックスで射精した後のほうが眠気を感じやすい人は、パートナーを喜ばせるために頑張っていた証拠かもしれませんね。
それ以外に考えられるのは、興奮状態から元の状態に戻る際に副交感神経が優位になってリラックス状態になっている、体力を消耗して疲れが一気に押し寄せる…などでしょうか。いずれも医学的根拠があるわけではないので、あくまで参考程度に。「自分は射精後に眠くなる」という自覚を持っておくだけでも十分ですし、その旨を事前にパートナーに伝えて不安を感じさせないようにするのも良いと思いますよ。
Q:激しいセックスや回数が多すぎると、腟が傷むことはありますか?
A:傷みます!
吉本先生:濡れていない腟に触れれば粘膜が傷つきますし、回数が多いほど摩擦ダメージが増えて負担になることもあります。腟内は粘膜なので、内部が傷むと感染症を起こす可能性が。性交後しばらく経っても痛みがある場合は負担になっているので、気持ちいいと感じる程度に方法や回数をコントロールしていきましょう。
Q:性交痛があるのですが、原因と対策を教えてください。
A:原因も対策も多種多様。婦人科で相談してみましょう
吉本先生:性交痛は恐怖心によって痛いと感じているだけのケースや、もともと腟口が狭いケース、子宮内膜症のような婦人科系疾患が原因で痛いケースなど原因はさまざま。対策としては潤滑ローションで滑りをよくしたり、セックスの体勢を工夫したりすれば改善されるかもしれませんが、濡れにくい体質というパターンもあるので、一度婦人科で相談してみるとよいですね。
あまり知られていないのですが、性交痛があるという悩みで婦人科を受診するのはわりと一般的。「パートナーに申し訳なさを感じて痛みを言い出せない」、「痛いのは自分が悪い」と責めてしまう人が非常に多いのです。また子宮内膜症などの病気が隠れている可能性を踏まえて、早めに受診するのが得策です。
Q.ペニスの勃起力をアップするにはどうすればいいですか?
A.勃起力アップのカギを握るのはED対策!
小堀先生:勃起力の向上とは、すなわちED(勃起不全・勃起障害)を予防することだと考えられます。満足な性行為を行うために十分に勃起できない・勃起を維持できない状態が継続もしくは再発することを指すEDの症状は、勃起力が低下した状態であると言い換えられますよね。
ご自身の勃起力が気になる人は、まずはEDかどうかを判断できる 「ED問診票(IIEF5)」でセルフチェックしてみるのはいかがでしょうか? 直近6カ月の状態で該当する項目をチェックし、総合点数によって正常の範囲か確かめることができます。以下のチェックリストを活用するか、私のクリニックブログ内にあるチェックツールなら自動計算で点数が算出されます。
勃起力がチェックできる【ED問診票(IIEF5)】
①勃起を維持する自信はどれくらいありましたか?
(1点)非常に低い
(2点)低い
(3点)中くらい
(4点)高い
(5点)非常に高い
②性的刺激によって勃起したとき、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか?
(1点)ほとんど、またはまったくならなかった
(2点)たまになった(半分よりかなり低い頻度)
(3点)時々なった(ほぼ半分の頻度)
(4点)しばしばなった(半分よりかなり高い頻度)
(5点)ほぼ毎回、または毎回なった
③性交の際、どれくらいの頻度で挿入後も勃起を維持できましたか?
(1点)ほとんど、またはまったく維持できなかった
(2点)たまに維持できた(半分よりかなり低い頻度)
(3点)時々維持できた (ほぼ半分の頻度)
(4点)しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
(5点)ほぼ毎回、または毎回維持できた
④性交の際、性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか?
(1点)極めて困難だった
(2点)とても困難だった
(3点)困難だった
(4点)やや困難だった
(5点)困難ではなかった
⑤性交を試みたとき、どれくらいの頻度で性交に満足できましたか?
(1点)ほとんど、またはまったく満足できなかった
(2点)たまに満足できた (半分よりかなり低い頻度)
(3点)時々満足できた (ほぼ半分の頻度)
(4点)しばしば満足できた (半分よりかなり高い頻度)
(5点)ほぼ毎回、または毎回満足できた
【総合点数】
25〜22点:正常
21〜17点:軽症
16〜12点:中等〜軽症
11〜8点:中等症
7〜5点:重症
※21点以下の場合はEDの疑いがあります。しかし、問診票の結果だけではEDの診断はできません。気になる場合は一度医療機関へ相談されることをおすすめします。
Q:セックスで潮を吹きやすくなってしまったのですが、出産となにか関係はありますか?
A:腟内の形状が変化し、スキーン腺が刺激されやすくなったのかも
吉本先生:腟の内側から、尿道口付近にある「スキーン腺」を刺激すると潮を吹きやすいとされています。出産後に腟の角度や広さが変わることで、スキーン腺に刺激が与えられやすくなったのかもしれません。
ちなみに潮の正体ははっきりと解明されておらず、尿であるという説と、性的興奮を受けたことによる分泌液であるという説があります。
Q.射精後にやってくる「賢者タイム」の正体は?
A.「プロラクチン」というホルモンが関係しています
賢者タイムは、「性反応」の4段階目
小堀先生:まず人間が性的な刺激を受けた際の心や体の変化は、「性反応」という4段階に分けられ、賢者タイムは4段階目の消退期に該当します。この段階で脳下垂体前葉から分泌される、「プロラクチン」というホルモンが賢者タイムに大きく関係しているのです。性科学者のマスターズとジョンソンは、ヒトの性反応を以下の4段階に分けています。
①興奮期
・心身の性的興奮を受けて心拍数が上昇
・性器が充血し始める
・男性は勃起
・女性は腟分泌液が多く分泌される
↓
②高原期(平坦期)
・心拍数、血圧、呼吸数がさらに上昇
・男性はカウパー腺液が分泌され始める
・女性は腟の奥が広がる
↓
③オルガズム期
・性的興奮がMAXに高まり、約0.8秒間隔で性器が収縮
・男性は射精、全身の火照りや発汗、微小なけいれんを伴うことも
・女性のオルガズムはさまざまなバリエーションがある
↓
④消退期(回復期)
・興奮状態のオルガズム期から平常時に戻る
・心拍数や呼吸が徐々に落ち着く
・膨らんだ性器が元の状態へ
プロラクチンの分泌により、興奮状態から冷静に
小堀先生:「プロラクチン」は乳汁分泌ホルモンと呼ばれ、主に乳腺の発達を促して母乳を作ることで知られています。そのほか、活動意欲や快楽を担っている神経伝達物質「ドーパミン」の働きを抑制する作用があるのです。つまり、ドーパミンの大量分泌によって興奮の絶頂にあるオルガズム期から、射精後はプロラクチンの分泌により冷静さを取り戻す。これが賢者タイムの正体だと考えられています。
Q:知っておくべき、性感染症のサインを教えてください。
A:おりものの変化、性交時の急な痛み、皮膚病変などがおもなサイン
吉本先生:性病(性感染症)はセックスにより感染し、あらゆる症状を引き起こします。それだけでなく銭湯やプールからの感染、免疫力の低下で発症することも。自己判断が難しい&自分で治すことはできないので、必ず婦人科で相談を! 代表的な性感染症のサインをいくつかご紹介します。
【性器カンジダ】
陰部のかゆみ・発疹、おりものの変化(色、質感、量、におい)、性交痛
【性器クラミジア】
おりものの変化(色、質感、量、におい)、不正出血
【性器ヘルペス】
外陰部や腟の不快感、かゆみ、痛み、水疱、びらん
【梅毒】
皮膚の発疹・ただれ、リンパ節の腫れ、口内のただれ・しこり
Q.お酒を飲むと中折れしてしまいます。これって年齢のせいですか?
A.飲酒量が多すぎるのかもしれません
小堀先生:毎回ではなく、お酒を飲んだ時にだけ中折れすることに困っているのなら、単純にご自身のキャパシティに対して飲酒量が多すぎるのが原因かもしれませんね。適量であれば心身の緊張がほぐれて勃起力アップに期待できますが、飲みすぎると脳や神経の伝達機能を低下させ、勃起を促す指令が伝わりにくくなります。自分にとって適度な飲酒量を把握しておき、飲みすぎないように気をつけるのが得策です。
ただし、毎回のように中折れしてしまうのはED(勃起不全・勃起障害)の症状です。「今まで同じ飲酒量でも中折れしなかったのに……」という人は、何かが原因で勃起力が低下していると考えられます。加齢のほか不健康な生活習慣や心理的な要素、薬の副作用でも起こり得ますが、そのほとんどはED治療薬を用いれば解消できますよ。EDや勃起力については【Q17:ペニスの勃起力をアップするにはどうすればいいですか?】、【Q20:男性性機能が低下しはじめる具体的な時期は?】で解説していますので、ご参照ください。
Q.射精後もセックスを継続したいが、ペニスが擦れるような痛みがあり断念。原因と対策は?
A.ほどよく楽しめる範囲で。通常時も痛みが続くようなら亀頭包皮炎かも
小堀先生:相手を十分に満足させたい気持ちはとても素晴らしいことですが、痛みが出てつらいときは無理に続けないように。物理的に擦れて痛いだけならば病気ではなさそうなので、ほどよく楽しめる範囲でセックスを行いましょう。ペニスは勃起すると血液が集まって平常時より敏感な状態なので、亀頭部が擦れて痛いようなら潤滑ローションを活用するのもいいと思います。
ペニスの皮膚が赤くはれたり、白いカスが出てくるときは、亀頭包皮炎の状態です。優しく洗い、ワセリンのように粘膜を保護する軟膏を塗布することで治療することができます。
Q.セックスの最中にペニスが傷ついて出血。どうケアするのが正解?
A.セックスを中止して炎症を抑えるケアを!
小堀先生:男女問わず、性器から出血があればセックスを中断して止血を。痛みがあるかどうか様子を見て、血が止まらなければ病院へ行きましょう。とくに痛みはなく、ほんの少し傷ついてすぐに血が止まることが何度か続くのであれば、「亀頭包皮炎」によって包皮に炎症が起きて傷つきやすくなっているのかもしれませんね。
亀頭包皮炎は、セックスとは関係なくとも常在菌を原因として起こる炎症です。時には石鹸で洗いすぎるなど、皮膚の過剰な刺激によって起こる場合もあります。包皮に対してリング状に炎症が起きやすいため、ペニスを刺激する上下の動きでピリッと裂けてしまい、しわに沿って出血するパターンが多いのです。もし亀頭包皮炎によってペニスが傷つきやすくなっているなら、包皮の炎症を治すのが最優先!
Q.コンドームをつけるとペニスが痛くなり、気分が落ち込んで小さくなってしまいます
A.原因を探り、必要に応じてED治療薬を試してみましょう
小堀先生:これは正直、何が原因かによって対処が変わってきますね。コンドームそのものが原因で痛くなるなら、別の種類やサイズを試して自分に合うものを見つけるのが大切。伸縮性のある素材や潤滑ゼリーの硬さによって好みは分かれますし、そもそもつけ方が悪くて痛みを感じているケースもあります。いつもとは違うタイプを探してみるのはいかがでしょう?
また、気分の落ち込みで勃起状態が維持できずペニスが萎えてしまうのは、ED(勃起不全・勃起障害)の症状なのでED治療薬での対処になります。おそらくコンドームの装着により普段のマスターベーションとは違う刺激となり、勃起や射精に不自由が生じているのでしょう。
Q.妊活を始めてから、「排卵日だから」とセックスしようとすると、勃たなくなってしまいました。原因と対策を知りたいです
A.緊張の神経である「交感神経」が優位になると、勃起しづらくなります
小堀先生:勃起は、リラックスしている状態の、副交感神経が優位のときに起こりやすくなるものです。だから、一人でマスターベーションするときは、問題なく勃起することができるのですが、いざ「排卵日だからセックスしなくちゃいけない」という義務感を感じたり、「何とか赤ちゃんを作りたい」というふうに頑張ろうと考えたりすると、逆に緊張の神経である「交感神経」が優位になってしまい、勃起できなくなってしまうのです。頑張ろうとすればするほど、かえって勃起できなくなってしまうのが、男のジレンマです。
男性が勃起しづらくなってしまうのは、パートナーに愛情がなくなったわけでなく、真剣に考えているからこそ勃起がしづらくなっているのです。その点をご理解ください。
対策としては、ED治療薬が非常に効果的です。基礎疾患がない人は、90%近くの人に効果があります。副作用が少なく、有効な薬ですので、ご利用いただくことをおすすめいたします。
Q.早漏に効く薬はありますか?
A.抗うつ薬の一種は早漏に対して効果がありますが、厚生労働省から承認はされていません
小堀先生:厚生労働省が承認している、早漏に対する薬は日本国内にはないのが現状です。しかし、世界に目を向けると、米国泌尿器科学会や、国際性機能学会では、早漏を「治療することのできる疾患」として、治療のガイドラインが定められています。
世界の早漏治療ガイドラインに記載のある日本国内で使用できる薬としては、パロキセチンといった選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬があります。
実は、射精をコントロールしているのはペニスではなくて、脳なのです。脳内で、セロトニンは「射精を我慢させることができる」働きをします。早漏治療薬を飲んで脳内のセロトニンレベルを上昇させることにより、比較的副作用が少なく、射精をコントロールできるようになることがわかっています。具体的に言うと、射精までの時間が服用しないときに比べて3~5倍に延長するのです。パロキセチンは本来うつ病に使う薬ですので、適応外使用として処方が可能であれば、自費診療で薬を使用することができます。
Q.セックスは腟トレになりますか?
A.セックスよりも日常で習慣化しやすい腟トレをしてみては?
吉本先生:腟への挿入によるセックスは、腟をゆるめて男性器を受け入れる行為です。挿入後のピストン時に腟をキュッと締めることを意識すれば、骨盤底筋のトレーニングにつながるかもしれませんが…確証はありません。
正常位は出産時と同じ体勢なので腟がゆるみやすいし、騎乗位なら腟が締まりやすいかといったら、そういうわけでもないのです。セックスで腟トレをしようと思わず、筋トレのように日常で習慣化しやすい方法を選ぶことをおすすめします。
Q.セックス後、おりものに血が混ざることがあります。大丈夫でしょうか?
A.継続して出血があるなら要注意
吉本先生:性交時の刺激で一時的に腟内から出血しても、時間が経てば自然とおさまります。性交後のおりものに血が混じった状態が数日続くほか、継続的に出血するようならば子宮内で感染症を起こしている可能性があります。放置せずにすぐに婦人科へかかりましょう。
取材・文/井上ハナエ 構成/木村美紀