HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンと2年に1回の検診で、子宮頸がんは、ほぼ予防できるようになりました。検診だけでも、ワクチンだけでも、子宮頸がんは予防できません。検診とワクチンを組み合わせることで、子宮頸がんを予防できるのです。ワクチンと検診の組み合わせ方について、引き続き、産婦人科医の柴田綾子先生に聞きました。

柴田綾子先生のイラストによる、連載第14回の扉

検診だけ、ワクチンだけでは、子宮頸がんの予防はできない!

増田 「子宮頸がん検診を受けていれば、HPVワクチンは接種しなくていいのでは?」とか、また逆に、「ワクチンを接種したら、検診は受けなくても大丈夫」という声を聞きます。ワクチンと検診を組み合わせるメリットについて、教えていただけますでしょうか?

柴田先生 子宮頸がん検診は、がんの早期発見と早期治療を目的に行われるもの。検診ではがんの発症を防ぐことはできません。子宮頸がんの発症を防ぐには、やはりHPVワクチンを接種することが大切なんです。

でも、子宮頸がんのなかには、ワクチンでは防げないウイルスタイプによる子宮頸がんもあります。ですから、ワクチンだけでも不十分で、検診と組み合わせることが必要です。子宮頸がんを予防するには、ワクチンと検診は車の両輪。どちらも大切なのです。

子宮頸がん予防にはこの2つがとても大切

増田 子宮頸がん検診だけでは、早期発見で命は助かっても、将来、出産時のリスクなどがあると聞きました。

柴田先生 検診で子宮頸がんが見つかったら、手術が必要です。超早期発見で、前がん病変(異形成)やごく初期の子宮頸がんで発見できたとしても、細胞の変化した部分を切り取る子宮頸部の円錐切除術を行うことになります。円錐切除術をした場合、将来、妊娠・出産をする際に早産や流産などが起こる可能性があるのです。

また、子宮頸がん検査は100%ではなく、がんや異形成を見逃してしまう可能性もあります。もちろん、ワクチンは有効ですが100%予防できるわけでもありません。2つを組み合わせることで、「ほぼ」子宮頸がんを予防できるようになるのです。ぜひ、20歳になったら2年に1回、子宮頸がん検診を定期的に受けていただきたいですね。

増田 日本は、子宮頸がん検診の受診率がまだ約40%。ワクチン接種率と検診受診率の両方が、海外に比べて低いことが問題になっています。このままでは、日本だけHPVが蔓延して、子宮頸がんになる女性が増えていくことになってしまいます。


 

各国のHPVワクチン接種プログラム対象女子の接種室

※HPV:ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)
Garland SM et al.  Clin Infect Dis. 2016; 63: 519-527 より作成
厚生労働省 定期の予防接種実施者数 より作成
https://www.mhlw.go.jp/topics/bcg/other/5.html

HPVワクチンを接種するにはどうすれば?

増田 2021年11月、厚労省から全国の自治体に対して、HPVワクチンの無料接種を対象者に個別案内するように発表されました。定期接種の対象となる人(小学校6年生から高校1年生の女子)には自治体から予診票などが送付されることになりましたが、これを待っていればいいのでしょうか?

柴田先生 2022年4月から、各自治体が無料接種の対象者にお知らせを発送すると言われています。なかにはすでに始まっている自治体もありますので、お住まいの地域のHPVワクチンの情報を、自治体のホームページを見たり、問い合わせをしたりして調べてみてください。今、無料の定期接種で受けられるワクチンは、2価ワクチン(「サーバリックス®」)と4価ワクチン(「ガーダシル®」)の2種類です。

増田 無料接種の対象外で、自己負担で接種を希望する人はどうすればいいですか?

柴田先生 自費で接種を希望する人は、産婦人科や内科、小児科、ワクチン外来、感染症外来などで接種することができます。まずホームページや電話でHPVワクチン接種を行なっていることを確認して、予約を入れます。クリニックによってはワクチンを取り寄せる必要がありますので、必ず予約をしてください。2価、4価、9価ワクチンのどれにするか迷っている人は、それについても相談できます。

※最後に、HPVワクチン相談&接種医療機関リストがあります。

柴田綾子先生

淀川キリスト教病院 産婦人科で女性たちの診療にあたる柴田先生。語り口にも穏やかで誠実な人柄がにじみます。

年間1万人もの女性が子宮頸がんにかかっている!

増田 日本女性が子宮頸がんにかかる人数も、亡くなる人も減っていませんね。

柴田先生 自分は子宮頸がんとは関係ないと思っている人も多いと思います。でも、1年間に1万人もの女性がかかる病気です。そして、年間2900人もの女性が子宮頸がんで亡くなっているのです。特に若い女性にとっては、めずらしい病気ではありません。偏見や遊んでいるという間違ったイメージから、子宮頸がんを公表できず、医療機関に相談できない人もいます。繰り返しになりますが、子宮頸がんは、だれでもかかる可能性のある病気なのです。

子宮頸がんになったときの、心と体へのダメージは大きいものです。妊娠や出産をあきらめなければならなくなったり、仕事や結婚への影響もあるかもしれません。人生が大きく変わってしまうことを考えると、ワクチンには、大きな力があると思います。

増田 いきなりワクチン接種というだけでなく、まず相談に乗ってもらって、考えてからワクチンを受けられる医療機関のリストもありますね。

柴田先生 はい。「ワクチンを打ってみたいけど、どうなのかな?」と、まわりに相談できる人がいなかったりすることもありますよね。子宮頸がんについて相談できる場所や、ワクチンを接種できる医療機関の情報が少ないという問題点もあります。そこで、私が理事を務めるNPO法人女性医療ネットワークで、HPVワクチンの相談や実際に接種のできる全国の医療機関リストを作りました。ぜひ参考にしてみてください。

【NPO法人女性医療ネットワーク】
子宮頸がん検診やHPVワクチンに関する相談可能な医療機関リスト


増田 柴田先生、3回にわたって、子宮頸がんとHPVワクチンの詳しいお話を本当にありがとうございました!

柴田綾子先生

淀川キリスト教病院 産婦人科医

柴田綾子先生

日本産科婦人科学会産婦人科専門医。日本周産期・新生児医学会周産期専門医(母体・胎児)。名古屋大学情報文化学部を卒業後、群馬大学医学部に編入。沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職。世界遺産15カ国ほどを旅した経験から、母子保健に関心を持ち、産婦人科医に。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社)『産婦人科研修ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』(日本医事新報社)ほか。NPO法人女性医療ネットワーク理事。

増田美加

女性医療ジャーナリスト

増田美加

35年にわたり、女性の医療、ヘルスケアを取材。エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』ほか

撮影/島袋智子 イラスト/itabamoe Photo by Manit Chaidee/iStock/iStock /Getty Images Plus 取材・文/増田美加 企画・編集/浅香淳子(yoi)

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